2019-01-24

毎月勤労統計調査等に関する特別監察委員会報告書における素朴な疑

https://www.mhlw.go.jp/content/10108000/000472506.pdf

5ページ下部に以下の記載がある。

○ なお、平成14(2002)年9月18日、平成20(2008)年2月29日及び平成23(2011)年8月4日に、毎月勤労統計調査の変更について、厚生労働大臣から総務大臣あて申請され、それぞれ、総務大臣から厚生労働大臣に「変更を承認する」旨の通知がなされているが、当該承認事項の中には、抽出率に関する記載はなかった。これらの手続に係る決裁は、大臣官房統計情報部長の専決により行われた。

これはつまり同調査は総務省承認を受けていたが、総務省には500人以上の事業所について全数調査するものとして申請していなかったということ(そもそも申請事項に含まれていない)。となると、「500人以上の事業所について本来全数調査であるべきだった(全数調査とするルールだった)」と報道されているのはどう解釈するのか。

2つ上のポツでは以下の記載がある。

○ その後の毎月勤労統計調査における指定事業所抽出替えの2年ないし3年ごとの実施に伴い通知された平成18(2006)年7月、平成20(2008)年4月及び平成23(2011)年4月の事務取扱要領においても同様の記載がなされ(なお、後述するように平成26(2014)年4月の事務取扱要領からは当該記述記載されていない。)、実際には平成16(2004)年1月調査以降、毎月勤労統計調査における東京都の規模500人以上の事業所については抽出調査となっており、年報における「全数調査」との記述と相違する取扱いがなされている。

まり、年報に「規模500人以上は全数調査」と書いてあるが、実際には抽出調査を行っていたということ。これを報道整合的になるように解釈すると、年報に全数調査と書いてるんだからそれがルールから抽出調査にするのはけしからん、という話らしい。しかし、年報って統計作成部局統計の結果を載せる報告書ではないのか。つまり、年報に東京都の規模500人以上は抽出調査と書いてさえいれば、何も問題ないように思われる。つまり調査方法おかしかったのではなく、年報の記載おかしかったという話。

何が言いたいかというと、そもそも報道されているような「規模500人以上は全数調査とする」というルールは、2004年当時は存在しなかったのではないか、という疑問。

報告書の15ページには、この部分の評価として、

東京都の規模500人以上の事業所について抽出調査にすることについて、調査計画の変更等の適切な手続を踏むことなく、担当課のみの判断として調査方法を変更したことは、不適切対応であったと言わざるを得ない」

とあるが、そもそも調査計画の変更等の適切な手続といっても、(総務省承認を受けている)調査計画には抽出率に関する記載がなかったのだから、どこをどう変更申請すべきだったのかわからない。ここの文章解釈としては、担当レベル判断するのではなく、それより上にまでその話をいれて組織として判断すべきだった、ということなのだろうか。

いずれにせよ、「規模500人以上は全数調査とする」というルールは、当初は存在しなく、2017年1月承認時に初めて承認事項に含まれたとのことなので、実際にルール化されたのはこのときからだと言えるだろう。といっても、今まで(特に問題なかったと思われる)抽出調査としていたのに全数調査ルールをあえてここで導入したのは気持ち悪すぎる。この承認時に、「※なお、東京都抽出調査とする」と記載さえしていればこんなおかし自体にならなかったのではと思うと、何とも言えない気持ちになる。

ちなみに、抽出調査をしたのに復元倍率が正しく設定されていなかった問題(今回の数値修正に直結)は別にあるが、ここでは取り上げていない。これは組織体制に基づく技術的なミスということのようだ。

  • 月勤労統計調査については、遅くとも平成元(1989)年から、最新版である平成29 (2017)年の年報に至るまですべての年の年報において、規模500人以上の事業所につ ...

  • 投稿者です。 あまりに反応が少ないので改めて簡単に主張の概要を書いておくと、 今般の毎月勤労統計調査にかかる事案について、「規模500人以上の事業所は全数調査というルールだ...

記事への反応(ブックマークコメント)

ログイン ユーザー登録
ようこそ ゲスト さん