2018-10-29

高校国語はどう変わるのか? 論理国語について

http://b.hatena.ne.jp/entry/twitter.com/arapanman/status/1056039063516401664

「契約書を読む授業になる」「高校から文学作品が消える」など、非常に限られた情報のみから判断し、意見を言うのはブクマカの悪い癖だ。

まずこれらが事実なのか、どういう根拠を元にしてるのか、裏をとることが大事。

まずどういう考えがあって教育指導要領の改定に至ったのか、具体的にどのような変更がなされたのかが、ここに書いてある

議論したいのなら最低限、該当部分は読め。

幼稚園、小学校、中学校、高等学校及び特別支援学校の学習指導要領等の改善及び必要な方策等について  平成28年12月21日 中央教育審議会

http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chukyo/chukyo0/toushin/__icsFiles/afieldfile/2017/01/10/1380902_0.pdf

(国語については、p124~)

別紙 (こちらのほうが図としてまとまってる)

http://www.mext.go.jp/component/b_menu/shingi/toushin/__icsFiles/afieldfile/2017/01/10/1380902_3_1.pdf

読めば分かるが、どうせほとんどの人間は読まないのでまとめておくと

現行→ 国語総合(必修4単位)、国語表現(選択3単位)、現代文A(選択2単位)、現代文B(選択4単位)、古典A(選択2単位)、古典B(選択4単位)

今後→ 現代の国語(必修2単位)、言語文化(必修2単位)、論理国語(選択4単位)、文学国語(選択4単位)、国語表現(選択4単位)、古典探究(選択4単位)

となる。

特に論理国語については、こう書かれている。

選択科目「論理国語」は、多様な文章等を多面的・多角的に理解し、創造的に思考して自分の考えを形成し、論理的に表現する能力を育成する科目として、主として「思考力・判断力・表現力等」の創造的・論理的思考の側面の力を育成する。

これだけじゃわからないので、指導要領の解説があったので、読んでみる。

高等学校学習指導要領解説 国語編

http://www.mext.go.jp/component/a_menu/education/micro_detail/__icsFiles/afieldfile/2018/07/13/1407073_02.pdf

示された情報の信頼性や妥当性を見極めながら,他者の主張や考えを的確に理解するとともに,自らの主張や考えについても,相手に受け入れられるよう,論拠に基づいて効果的に構築する資質・能力の育成が必要である。「論理国語」は,このことを踏まえ,新たに置いた選択科目である。

批判的にとしたのは,「論理的に考える力」に加えて,文章や資料における情報や,情報と情報との関係などをそのまま受け入れるのではなく,文章や資料を対象化して,その正誤や適否を吟味したり検討したりしながら考える力や,それを踏まえて自分自身の思考を意識的に吟味する力を重視したことを示している。

主張とその前提との関係について理解を深めることは,「隠された前提(言及されない前提)」に気付き,検討する力につながる。「隠された前提」の検討は,批判的な思考の重要な手続きの一つである。例えば,「彼は本校の生徒ではない。よって彼は本校の図書室を利用できない。」という論理における「隠された前提」=「本校の生徒だけが図書室を利用できる。」に気付くような力である。主張に対する反証は,異なる根拠や論拠をあげて,主張とは別の結論を得る筋道である。同じ根拠から異なる論拠によって,全く異なる主張がなされる場合もある。例えば「昨年は倍率が低かった」という根拠からは,「今年は倍率が高くなる」,「今年も倍率は低い」の二つの主張が導かれ得る。ある主張とそれに対する反証との関係を理解するためには,両者の根拠や論拠,主張のそれぞれを対比的に検討することが必要となる。

情報の妥当性や信頼性を吟味しながら,自分の立場や論点を明確にして,主張を支える適切な根拠をそろえること。

集めた情報の妥当性とは,その情報が正しいものであるということに加えて,その情報を根拠として挙げる場合などに,根拠としての適切さを備えていることであり,その情報が置かれる場の中で相対的かつ不断に判断されるものである。

情報の信頼性とは,その情報の発信源などから,その情報が確かなものであると判断できることである。その際,出典の示し方から確認するだけでなく,誰が,いつ,どこで発信したものかを確認した上で判断する必要がある。

主張を支える適切な根拠とは,立てた問いに対する結論を読み手に納得させるための客観的な証拠や経験的な事実のことである。主張の真偽の確認過程で得られた情報も一つの根拠と考えることができる。その根拠でその主張を導くことができるのか,主張に対する一つ一つの根拠の整合性を確認することが大切である。

多面的・多角的な視点から自分の考えを見直したり,根拠や論拠の吟味を重ねたりして,主張を明確にすること。

個々の文の表現の仕方や段落の構造を吟味するなど,文全体の論理の明晰せきさを確かめ,自分の主張が的確に伝わる文章になるよう工夫すること。

設定した題材について多様な資料を集め,調べたことを整理して,様々な観点から自分の意見や考えを論述する活動。


読んだところ、ものすごくしっくりきた。俺は大学時代にディベートをやっていて、この活動で論理的な文章の書き方や考え方を学んだ。高校生にも指導しに行ったが、まさにこういう内容を伝えたかった。ネットが普及した現代こそ、根拠を重視する論理国語の教育は重要だと思う。

逆に、根拠の吟味はおろか、情報が妥当かどうかも裏どりすらしないブクマカたちを見て、今の国語教育は失敗してると感じた。読んだ記事に反射的にコメント書く前に、その情報が正しいのか、裏を取れ。背景を調べろ。正義感に浸ってコメントを書くな。多面的に考えろ。

なので論理国語の導入には大賛成。

また駐車場の契約書を読まさせるといった言論があった。論理国語でどんな文章を読むのかについては、指導要領解説にこう書かれている。

内容の〔思考力,判断力,表現力等〕の「B読むこと」の教材は,近代以降の論理的な文章及び現代の社会生活に必要とされる実用的な文章とすることを示している。

近代以降の論理的な文章とは,明治時代以降に書かれた,説明文,論説文や解説文,評論文,意見文や批評文,学術論文などの論理的な文章のことである。

一方,実用的な文章とは,一般的には,実社会において,具体的な何かの目的やねらいを達するために書かれた文章のことであり,報道や広報の文章,案内,紹介,連絡,依頼などの文章や手紙のほか,会議や裁判などの記録,報告書,説明書,企画書,提案書などの実務的な文章,法令文,キャッチフレーズ,宣伝の文章などがある。また,インターネット上の様々な文章や電子メールの多くも,実務的な文章の一種と考えることができる。

これらのうち,ここでは,成立して時間が経過し文化的価値が高まったものではなく,現代の社会生活に必要とされるものを取り上げることを示している。

社会において実用的な文章が使われるようだ。TOEICの問題っぽくなると考えても良さそうだ。

さらに2021年以降に導入される大学入試共通テストのプレ問題が公表されており、これをみると受験したことのあるひとはさらにTOEICっぽいと思うだろう。

https://www.dnc.ac.jp/daigakunyugakukibousyagakuryokuhyoka_test/pre-test_h29_01.html

29年の試験問題では、第一問で生徒会規約、生徒の要望書、学校新聞などの資料が貼られており、現代の社会生活で必要とされる実用的な文章を用いて、テクストを場面の中で的確に読み取る力,及び設問中の条件として示された目的等に応じて思考したことを表現する力を試している。

第二問では、図表や写真が含まれた論理的な文章を題材としている。図表や写真と文章とを関連付けながら,構成や展開をとらえるなど,テクストを的確に読み取る力を問うとともに,設問中に示された条件に応じて考えを深め,テクストの内容と結び付く情報とそれらの適切な論理の展開を判断する力を問うている。

ちなみに第三問が文学作品、第四問が古文、第五問が漢文である。

確かにこの問題構成ならば、大学入試共通テストで良い点をとるためには、論理国語の履修は必須だろう。

文学国語が1設問に対し、論理国語が2設問なのだから、本当にどちらか一つしか選べないということならば進学校は論理国語に傾くだろう。

この状況を鑑みて、「高校から文学作品がなくなる」と書いていたと思うのだが、事実だけをみると、今までなかった「文学国語」という文学を専門的に扱う授業が新しくでき、本当に文学を学びたい生徒にとって好ましい状況なのではないだろうか?

最後に俺が言いたいのは、雑誌のコラムの切り取られた事実のみの状況把握ができてない状態で、意見をあーだこーだ言って的外れな議論ばかりしてんじゃねーよってこと。

もう一度高校に戻って論理国語を受けてきて、主張とそれを支える根拠の吟味の仕方を学び、多角的・多面的な見方を覚え、自分の主張のための根拠を集め、他人に説得できる文章を書く術を学んできたほうがいいのではないだろうか?

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