俺はいじめられっ子だったし、あまりモテなかった。でも好意を持ってくれるような子もいないでもなかったが、中高生の頃は美少女以外は眼中になかったので受け入れられなかった。
そんなこんなで拗らせてしまって、浪人して大学に入り、ファッションには全く興味なく小汚い格好でバンド活動に没頭していた。今考えると服を新調することなく同じものをずっと使っていたので、ファッションどうこうの前にたぶん臭かったんじゃないかと思う。そりゃあモテない。
そんな俺だったが、帰省中に実家の電話が鳴り、全然絡んだ記憶のない高校の同級生からだった。何の用だったか忘れたが、呼び出されたのでそこに行くと、違う子がいた。
お互いの現住所は近くはなかったが都内で会えそうだったので次は都内で会う約束をした。
あっという間に付き合うことになって、何度か会った。
親も知っている子だったので、初めての彼女に浮かれて報告すると、すぐに別れるように言われた。別れなければ学費も出さないと脅された。
悲しかったが、付き合ってすぐの彼女と、自分の将来と天秤にかければ重い方は決まっている。
彼女に電話で別れを告げた。理由は言えないけれどもう会えないということで押し通した。「何で泣いてるの」と聞かれたが「泣いていない」と言って電話を切り、着信拒否した。めちゃくちゃ泣いたけれど、かわいそうなのは彼女の方だ。
短期間しか付き合えなかった初めての彼女。初めてできた大事な人に最低な酷いことをした。
もうすっかりおっさんになり、妻も子供もいるが彼女のことは忘れられない。あのまましばらく付き合っていたとしても、いずれ別れた可能性が高いような気もするが、いろんなことがあまりに印象深いし、終わり方があまりに残酷なことをしてしまったのでいつも心に引っかかっている。
男は引きずるけど女は引きずらないとよく言うから、彼女にとっては数多くの付き合った男たちの中の一つにすぎないのだろうか。
むしろそうあってほしいのだけれど、とにかく幸せになってくれていてほしいと思う。
しかし、後悔があるのかと言われれば、正直言って、ない。
俺の子供達が同じ状況になったら、俺も全力で別れさせるだろう。このシュリンクする日本で減り続ける中間層にしがみつくのがどれほど大変か。無用なリスクは極力排除しなければ生きていけない。犯罪者と親類になるのは御免だ。最悪だな。最低だ。好きだったのに。
最初の20文字ぐらい読んでモテ自慢だろうなーと思ったら予想通りでした