私が小学校高学年の時、ジャニーズのグループ、嵐の人気が爆発した。メンバーの主演するドラマが次々に放送され、ゴールデンタイムのバラエティがスタートし、出したシングルがじゃんじゃん売れていた。当時の私もご多分に漏れず、嵐のファンだった。櫻井翔くんの知的でスマートなイメージと裏腹に、ひどい運動音痴というギャップが好きだった。
しかし、母は「テレビをだらだら見ているとバカになる」と言ってドラマもバラエティも音楽番組もどれも見せてくれなかった。皆が寝静まったリビングでコソコソ見ていたところを捕まり、怒鳴られたことが何度もある。
アイドルや俳優のライブや舞台といった現場に来ず、タダで見られるコンテンツのみでファンを称する人々の蔑称として「茶の間」がある。私はその茶の間にすらなれなかった。時折哀れんだ父親がガラケーのワンセグで番組を見せてくれた。「流星の絆」だったかな、電波が悪く荒れ荒れの画面でも見られるだけで嬉しかった。優しい父のことはずっと大好きだ。
周りにも嵐のファンがたくさんいたから、たまに家に遊びに行って録画した番組を見せてもらったり、雑誌を読んだりした。コンサートも行ってないし、DVDも買ってないのに、何がファンだよは鼻で笑われてしまいそうだなとは思う。 まあ、ブームに乗っていただけなのかもしれない。
ある時私にも初潮が訪れた。保健体育の授業で聞いていたし、すでに「来た」という人はたくさんいたので、特に感傷は無かった。ただ、生理が始まると身体の成長が止まり体重が増えていく、と聞いていたので太ってしまうのは嫌だなあと思った。
「生理が始まったら、お母さんにどうしたらいいか聞きなさい」という保健体育の授業の通り、母に相談した。(真面目だ)
話を聞いた母は
「ジャニーズなんかにはまってるから生理が来るんだよ」と言って泣き出してしまった。
それを聞いた時のショックは今でも忘れられない。まず「初潮が来たという成長を喜んでくれない」 そして「ジャニーズが好きだから生理が来た」という母の反応は想定外だった。
母は私の体形のことを私以上に気にしていたからそれが心配だったのかもしれない。けれど、まるで私が嵐に性的な感情を抱いていて、それがきっかけに性成熟したとでも思っているかのような口ぶりがとても気持ち悪かったし、悲しかった。
多くのアイドルやジャニーズのファンは、別に彼らに性的に興奮しているわけではないと思う。パフォーマンスや演技、パーソナリティが好きでファンをやっている。もちろん私もそうだった。
そういう「好き」ではないのに、嵐と私の気持ちを汚いもの扱いされて本当にショックだった。コソコソテレビを見ていたことや、音楽を聴いていたことをずっとそういう風に思われていたことにゾッとした。
それ以来、私はぷっつり嵐に対する関心を失った。綺麗な男性が出てくるコンテンツも楽しめなくなった。また母親に同じようなことを言われてしまう気がしたからだ。
今も相変わらず母との関係は最悪だけれど、実家を出してもらえないため一緒に暮らしている。居心地は最悪だけれども、お互い関わらないようにすることで平和を保っている。
友達が、母親とコイバナするんだ、互いいい歳なのに……と言って笑っていたのを聞いて別の世界の話みたいだと思った。多分三十路になったら、そろそろ結婚したらどうなの?とか聞いてくるに違いない。
知るか。
今日も女は毒親叩き