ヴィクトリアは一種の超越者で、箱庭のような小さな世界をたくさん作り、その中で生きる人間たちを観察している。
特に芸術などの方面で、優れた才能が生まれ育つことを彼女は喜びとしているようだ。
箱庭の中の人間たちはそこが箱庭であることを知らず、その狭い世界が宇宙のすべてだと思いながら生まれ、死んでゆく。
だが稀に、複数の箱庭世界をつなぐ階段やロビー階のような場所へ紛れ込む者がいる。
彼らは複数の世界を行き来するうちに、いつかどこかでヴィクトリアに出逢い、宇宙の真理の一端を垣間見る。
ヴィクトリアは貴族令嬢のような姿をしていて、自分の作った箱庭をあちらこちらと渡り歩きながら、
また新しい誰かが自分を見つけて逢いに来るのを待っている。それが、彼女のもう一つの楽しみなのだ。
箱庭を出たことのある者は、冒険心を持つもののまだ外の世界を知らない箱庭の住人に、そっと声をかける。
「ヴィクトリアに逢いに行け」と。