母によりますと、わたくしは生まれる前から姿勢が悪かったそうでございます。
以来、三十路の入り口に立つまで姿勢悪く過ごしてきました。一口に姿勢がよくないと申しましても様々かと存じますが、わたくしの場合は左右が非対称なのでございます。
つまりどういうことかと申しますに、左の尻に全体重をかけて斜めに座ったような姿勢をとっておることが多いのです。椅子に座っていてもこの調子。寝る時は大抵左を向いて寝ております。
とはいえそれ以外のところは特に悪いことはなく、性格の歪んだところもなければ生まれてこの方虫歯・インフルエンザ・ポイ捨てひとつしたことはございませんで、わたくし自身、健康を恃みにしたような生活を続けてまいりました。
ところがこのところ、お尻の調子が少々よくないようなのでございます。うんこをすれば3回に1回は血が出ます。悪いときはお尻を拭いたあとにポタ、ポタ、と血が滴る音が聞こえてくるのです。
痔でございます。
手鏡の上にしゃがみ込んで懐中電灯で照らしてみますと、お尻の穴の周りに青く鬱血したようなコブが4つは認められます。
さらに肛門の背なか側のあたり、ドーサルというのでしょうか、しゃがんだ拍子に切れてまさに血が出始めているのでございます。
試しにペーパーを挟んで観察しておりますと、じわじわと赤く染まってまいりますので、嗚呼、いよいよ本格的に痔でございます。
どうも不自然な姿勢が尻に無用な圧を生じて血の巡りが悪くなり、あわれ肛門に痔核を成すに至ったのでしょう。
白状いたしますと、わたくし自身いわゆる痔主であることは薄々感づいておりまして、10年来それとなく関心を寄せておりました。
こうした観点で拝見しておりますとポルノ女優の肛門にコブを発見することもしばしばなのですが、血色・形態ともわたくしほどに醜いお尻は、これまでに1回しか見たことがございません。
わたくしのお尻は、かなり悪いようなのでございます。
ここらが年貢の納め時、そろそろ治療しなければならないことはわかっておりますが、どうにも重い腰が、やっぱり左の尻に乗っかっているのでございます。