ええか。
お前らはまだ若いからどんなパンティーにも興奮してしまうだろうがな。
マンションに1階に住むOLは下着だけは室内に干す。ベランダにデーンとほしてあるのは大抵の場合、おばさんだ。
そうなると目を向けるべきは2階なんだ。
2階なら下から見にくいだろうとOLもベランダに干すケースがある。
でも、目隠しの柵の隙間から見えたものならそれはもうカナンと言っても差し支えない。そういう物に興奮を覚えるべきなんだ。
俺がお前らと同じぐらいの頃な、やっすいワンルーム7階建ての最上階に住んでた。
隣にはまるでワンルームを馬鹿にするかのようなでっかいマンションが立っててな、俺はなんというか、ベランダに出て左手から差す日光浴びながら歯磨きをするのが好きだったから朝はぼけーっと外を眺めながら歯磨きをしていたわけだ。
そこでな、気づいたんだ。真向かいってほどでもないんだけど、確かにでっかいマンションの少し下の方の階、多分5階だ。
眠気がぶっ飛んだ。
それまでは見えてなかったというより、探そうとすらしなかった。むしろ向かいのマンションを見ずに左手にある大きな道路を行き交う車を眺めて朝の活気を楽しんでた。
びっくりしすぎて即部屋に引っ込んだ。
間違いない、あそこには俺好みのライトグリーン色の下着をつける若いOLがいる。ライトグリーン色って時点で若いOL意外ありえない。しかも、ワンルームに住む俺何かと違って結構なエリートだ。これは、凄まじいぞ。
なぜライトグリーンが好きなのか?ど田舎から都会に出てきた俺にとって「緑」とは周りにあって当然のものって認識があった。社会人になって緑が恋しくなったんだと思う。だからライトグリーンが好きなのだ。
そこから向かいのマンションの5階住みのOLに恋をするわけだ。
でな、もしかしたら早起きしてればOLの姿を拝めるかもしれない。幸い俺の職場は10時始業だったので、多分、5時ぐらいから9時まで張ってれば早朝洗濯物を干す人がわかるだろうと。
それからいつも2時に寝て8時に起きていたのを11時に寝て5時に起きた。
流石に4時間も張るわけにもいかないし、逆に4時間もベランダにいたら向かいのマンションから「変な男がこちらのマンションをずっと見ている」と通報されかねない。なのでベランダにいてもおかしくない趣味を始める。それがガーデニングだった。
早速ホームセンターまで自転車を飛ばして小さいプランターや、防虫剤やプランターに被せるビニールや、花の苗を買う。選んだ花はパンジーだ。パンジーなら難しくない、小学校、中学校と園芸のおっちゃんと仲良くなっては手伝いをしていた自分にはカンタンなものだ。乾燥した土でもすくすく育つから水やりを忘れても問題ない。
そこで朝5時に起きて、いそいそとガーデニングを始める。まぁ、小さいプランターなので2時間もかからないうちに終わるが、そこから土をいじってるふりをして待つが、現れない。
その日はもしかしたら選択の日じゃないのかもしれないと思い、出社する。
翌日だ。
朝5時に起きてパッと確認すると、なんともうその部屋に洗濯物がほしてあった。
戦慄した。5時でもだめなのか?
なんどかそんなことを繰り返し、3時に起きたこともあったが、結局暗すぎてわからず。
もしそうであるならばこれ以上残酷なことがあるか。夜にガーデニングをして張るやつは明らかに変質者だ。せっかくパンティーの主を見るためにガーデニングを始めたのに無意味だっていうのかい。
そうやって、心の中にあのライトグリーンのパンティーをしまい込んで、ガーデニングは続けてるうちにきれいなパンジーが咲いた。
そして月日が経った。
俺がいつものようにお花の世話をしていると、例の部屋から女性がでてきた。
スラッとした長身の女性だ。多分自分より少し年上。きれいな人だった。
自分の心臓はバクバクした。あのライトグリーンのパンティーをあんなにきれいな人が穿いている。
奇跡と思った。
奇跡すぎて、勃起はしていなかった。興奮すらしてなかった。びっくりするぐらい。
ただ感じたのは「触れてはいけない何かを見た」ことだ。
それから自分はその隣のマンションの5階の例の部屋の呪縛に縛られることになる。見てはいけないのだ。
意識的に目をそむけ、そのこころにライトグリーンのパンティーなんてもはや存在しなかった。
知らなければよかった。
知らなければ俺の心にはライトグリーンのパンティーがあったのに。
しばらくして、転職をすることになり、くそったれなワンルームから少しはマシな1LDKの1階に引っ越した。
今でもガーデニングは続けている。それどころかベランダがかなり広い部屋を選んだ。今年は自分が育てたカーネションを母親にプレゼントできそうだ。