彼女に出会って、これまで自分は恋愛などしてこなかったのだと悟った。
少しでもいいから会いたい。
少しでも長く一緒にいたい。
こんなことを考えるようになったことは今まではなかった。
会社にいるときも少し気を抜くと彼女のことを思ってしまって、次はいつ会えるだろうかなどと考えて仕事が手につかなくなることがよくあって、自分でもどうしたのかと思う。
心から好きな恋人がいる人は誰でもそう思うのかもしれないが、どんな芸能人よりもかわいいと感じる。テレビで「妻や彼女が芸能人に見える催眠術と称して、本物と入れ替えたらどうなるか」というドッキリがあるが、もし自分があれをやられたら、どんな芸能人と入れ替わったとしても、「早く戻してほしい」と言える自信がある。「芸能人くらいきれいな人は飽きる」とかじゃなくて、彼女が誰よりもかわいいから。
付き合いたての頃は、かわいい、など言われ慣れているだろうから、あえて言わないようにしていたのだが、最近はもう我慢できなくて、「今日はかわいいね」「髪型変わって、もっときれいになったよ」などと、会うたび毎回言ってしまっている。
ずっと見ていたくなってしまうくらいかわいい彼女に、何と言えばよいのか。
自分が映画を見るのが好きなので「よく映画を見るけど、こんなにきれいな人は出てこないよ」「映画の登場人物じゃないよね?」「一緒に映画を観に行きたいとも思うけど、2時間近く隣にいるだけで目を合わせられないのは辛い」と言ってみたこともあった。
彼女は「イタリア人じゃないんだから」と笑って返すけど、気持ちを正直に言ってくれてうれしいと言ってくれる。
でも、「かわいいね」とばかり言っているだけで、これ以上にうまく伝えられない。語彙力がないせいなのだろうが、気持ちをうまく表現できない。自分が見たものや感じたことを豊かな言葉にして表現できないことが、これほど辛いことだとは思わなかった。30歳を目前にして、人生で初めて自分が使える語彙の乏しさを悔しく思う。
澄んだ瞳の彼女と目を合わせていると、映画や舞台の悲しい場面を見ているときのような、心の奥底を柔らかい布で撫でられているような、明日には自分の身体がなくなってしまいそうなほど切ない気分になって、家に帰らないといけない現実をどうしても受け入れられなくて涙が溢れそうになる、そんな感情を、うまく表現できずに、もどかしい気持ちになる。
好きだという気持ちをどう伝えたらよいのか、何と言ったら彼女は喜んでくれるのか、それが気になって仕方ない。「言葉ではなくて態度で示す」という人もいるけど、やはり自分は言葉にして伝えたい。
小説でも読んだほうがいいのだろうか。
20世紀最大の文学者ジェイムス・ジョイスも恋におちたら語彙力がなくなっていたみたいだから気にするな。それが正常だ。
プロポーズしろよ できるものならなw
詩歌を詠め
山田詠美読んでみて。小説。