なぜかはわからないが、アスペルガー症候群の真逆のように、空気が読める。
正確には、自分のよく知っている人が何をしたら、どのような反応をするのかを正確に読むことができる。
おそらく95%くらいで当たるので、役に立つ能力だと言えばそうかもしれない。
大学時代は先輩・同期・後輩がどのようなことに価値を感じており、何をされると嬉しいのかわかるので、気の利くヤツと周りから重宝されていた。
モテるような容姿ではなかったが、好きな女性の機嫌やされると嬉しいことがわかるので彼女はできた。
会社に入ったら、上司ともツーカーのようになるので、気の利くヤツとして、それなりに出世した。
出世というか、上司や先輩から可愛がられ、社内の王道的な部署のポジションにいるというのが正しい。
何をしたら、どのような反応をするのがわかるということは、ほぼ正確に実コミュニケーションをエミュレータ上で模倣できるということだ。
学生時代にはそんなことはなかったのだが、仕事で忙しくなればなるほど、
エミュレータ上でのコミュニケーションに自分が頼ってしまい、他者とのコミュニケーションが疎かになりはじめた。
これは問題だと思って、真面目に連絡や相談をするようにしたが、そこで返ってくる反応は自分の想像と変わらない。
とはいえ95%の精度ということは5%は失敗する。失敗してはいけない上司の意思決定の読みを失敗してしまうことも頻発した。
社内での評判は、周りに情報を流さないヤツ、スタンドプレーをするヤツと低下していった。
家族もそうだ。どうせ言っても仕方ないと、自分の中で問題を溜め込み、妻からも見放された。
悲しいかな、彼らがこのような反応をするだろうことも織り込み済みだった。