もう十年以上前の話。
私は友人の運転する車の助手席に座っていた。すると後ろから追突された。
生まれて初めての交通事故だった。こちらが完全に停止している状態だったので、責任は10:0。
当時の私は免許を持っておらず、車に関する知識をほとんど持っていなかった。
もちろん保険についてもだ。保険会社に指示されるまま病院へ行き、よく分からないまま診断を受けた。
結果について保険会社と友人に報告を済ませたところ、
友人が「物損ではなく人身事故として扱い、相手側から慰謝料を請求する」といった。
「弁護士を雇うから貰える額も増える」「だから少し分け前が欲しい」ともいった。
今はこれが示談屋だと分かるのだが、当時の私は「そういうものか」と思って友人に任せた。
そしてやはり、間違いだったのだ。
当然、そんなのは横暴だといったが、友人は「物損として扱うこともできた。慰謝料が貰えるのは自分のおかげだ」と返した。
その瞬間に友人は元友人へと変わった。
彼女は怪我した私に対して、一度も怪我の容態を聞くことはなかった。
ああ。この人にとって私はただの金づるだったのだと、私は冷めきった気持ちになった。