2018-03-21

anond:20180320223629

精子の質が経年で変化するかどうか調べることは技術的に容易です。齢15歳から毎年精液を採取して、凍結しておく。50歳くらいまで溜まったら、一気に解析する。これで経年変化を追うことができます対応ありの統計検定を使えば簡単有意差を導けると思います。ただし精原細胞ニッシェのローテーションという現象があるので、もしかすると毎年複数回採取する必要があるかもしれません。ヒトでどのくらいの頻度でローテーションするかは予め調べておく必要があるでしょう。おそらく精原細胞ゲノムあるいはエピゲノムに年を経るごとに変異が蓄積され、精原細胞の成長を促進する変異をもった精原細胞グループが精細管内でドミナントになり、高齢になるほど精子ゲノムおよびエピゲノムには精原細胞の増殖に有利な変異を蓄積していくはずです。ここではとりあえず、細胞周期に関する遺伝子や、成長因子の受容体遺伝子変異が入ることを想定しておきます。この変異が胚発生に影響を与えると考えられます。精原細胞で生じたエピゲノム変異が胚発生全体を支配して、次世代表現型を変化させるとは個人的には信じたくありませんが、実験動物ではこの仮説を支持する報告がなされています。もしこの仮説がヒトにも適応されるとしても、次々世代配偶子形成過程エピゲノム情報リセットされると考えられるため、それほど問題は深刻ではありません。一方でゲノム塩基配列変異した場合を考えてみると、精原細胞の増殖に有利な変異が胚発生に悪影響を与えることは充分にありえると思います。このとき、次々世代にもその変異遺伝する可能性があるという点は極めて重要です。もしこの変異によって自閉症誘導されるならば、次々世代にも自閉症児の出現頻度が増加するからです。ところで精原細胞ゲノム変異が生じた場合、それが次世代遺伝する確率はおよそ1/2です。精子形成過程減数分裂を経るからです(およそ、と断ったのは、ホモ変異が生じる場合があるからです)。さら受精によって母性ゲノム希釈されるため、精原細胞ゲノム変異の影響は減少します。卵母細胞には、おそらく精原細胞の増殖に有利な変異は生じないためです。ともあれ精原細胞の増殖に有利な変異をもった、胚がこうして生じえることを示してきました。この変異個体レベル自閉症という表現型を呈するかどうかは今のところ私は知りませんが、検討する価値のある問題だと思います。ところで、人類高齢出産を経験するのはおそらく史上初めてのことだと思います。つまり問題になっている高齢出産で生まれ子供たちは、第1世代です。したがってもしこのメカニズム自閉症児が生まれるとすれば、変異ヘテロでもった世代表現型を呈するということになります日本人比較遺伝的に均一な集団です。つまり日本人同士の交配が多いという傾向を意味しています。そして日本人は晩婚化が進行し続けています。このままの傾向が続くと、やがてこの変異ホモでもった子供たちが生まれてくることでしょう。このことが何を意味するのかは今のところ未知ですが、細胞周期という用語からはガンという疾病を連想してしまますさらに、経験的には精子形成に使われる遺伝子は、どういうわけか神経発生に関連する遺伝子が多いように思われます。恐ろしい想像をかきたてられます。以上に思いついたことを書いてみたのですが、この仮説を検証する実験を書いておきます。それは、高齢父親からまれ自閉症患者の精原細胞の増殖特性を調べるのです。コントロールには兄の精原細胞が最適だと思われます。精原細胞の増殖に有利な変異が疾患をもたらしているのであれば、彼らの精原細胞はすべてその変異をもっているはずですから、精原細胞の増殖特性に変化が現れる可能性が高いと思います。また、兄を同じ親から先に生まれ男児定義すると、父親が若かったころの精子からまれてきています。したがってミューテーションが生じていない可能性があるのです。精原細胞を体外で安定的に増殖させることが可能なら、兄弟の精原細胞の増殖特性比較して、その原因を塩基配列レベル特定することはそれほど難しくはないように思えます問題の起こりやす遺伝子座を特定して、ゲノム編集遺伝子治療することもあり得るかもしれません。または数ある精子から問題のない精子選抜して体外受精することもできるようになるかもしれません。技術開発をすれば。でも、それよりもずっと自然方法もあります。まずは精液の凍結保存を奨励することです。適切な条件で保存された精液では、化学的には時が止まったのに等しいです。それから晩婚化の解消です。

もうおしまいなんですが、この文章を書いていて思ったことを2点、蛇足ながら書きつけておきますひとつは、精原細胞が利用している遺伝子群の多くは、ほかの細胞では用いられていないのではないかということ。いわば精子専用遺伝子を用意していて、変異が入ったとしても精子形成以外には影響が出ないようになっているのではないかということです。これは、精子形成関連の遺伝子を欠損しても不妊になるだけで死にはしない事が多いような気がするということと矛盾しませんが、まあ思い付きです。いまひとつは、精原細胞の一つに変異が入ったとしても、精原細胞細胞質を共有してクラスター形成していますから、大多数の正常なシブリング遺伝子産物を共有します。そうすると一つの細胞で増殖に有利な変異が入ったとしても、増殖のブーストクラスター全体でシェアされて、大したことなくなるということ。あるいは、正常なシブリングブーストされるために、結局は希釈されて変異をもった精子が胚に寄与する確率は低減するということです。これらは動物生殖細胞の老化を次世代に伝えないための防御機構理解することもできると思ったのです。こういうことは観念的で学問的ではないかもしれませんが、面白いと思うのです。なお、私がこういうことを調べようと思ったのは、私の父親高齢からです。私自身はキモくて金のないおっさんですが、若い子と結婚すれば変異マスクされると妄想するのでした。

記事への反応 -
  • 「最も自閉症の発生率が高かったのは父親が35歳から44歳までの間で、母親が10歳以上年下の場合である」 ■高齢の父親は“リスク” ・精○の質が一番良いとされるのは、10代後半から20...

    • 精子の質が経年で変化するかどうか調べることは技術的に容易です。齢15歳から毎年精液を採取して、凍結しておく。50歳くらいまで溜まったら、一気に解析する。これで経年変化を追う...

    • 真面目な内容なんだし伏字にしなくてもいいのでは

    • 男も35歳以上からハイリスクだぞ https://anond.hatelabo.jp/20180320223629

      • ということは 男は25-35 女20-30 じゃないとハイリスクってわけやな

    • 精子の老化はリスクだけど、女性が若い場合に限定されるんやな そりゃ精子も卵子も両方老化してたらそもそも受精失敗しそうやもんな

記事への反応(ブックマークコメント)

ログイン ユーザー登録
ようこそ ゲスト さん