むかしむかし、あるところに太郎がいました。
太郎が川辺で遊んでいると、川上から「どんぶらこ、どんぶらこ」という辞書にない謎の言葉と共に大きな桃が流れてきたので、太郎は桃を拾い上げて家に持ち帰りました。
太郎のパパとママが大きな桃を割ってみると、中から小さな男の子が出てきました。「桃次郎」と名付けて大切に育てました。
太郎はのんびり屋で趣味に生きていましたが、桃次郎は正義感に溢れていました。
ある日、桃次郎は言いました。「パパ、ママ、太郎、鬼ってのがいるらしいね。退治に行ってくるよ」
意志の堅い桃次郎を止められる者は誰もおらず、桃次郎はきびだんごを受け取って征伐に出かけました。
「私は桃太郎ではない。桃次郎だ」
道中、猿と雉も「桃太郎さん、きびだんごください」と言ってきましたが、同様の手順を踏み、桃次郎は一人で鬼ヶ島に上陸しました。
鬼との戦いが始まりました。しかし、桃次郎ひとりだけではとても戦力不足。圧倒的な力の差。
記憶が走馬灯のように流れる中「さっき散々間違えられた桃太郎ってのは一体誰なんだ」という疑問が浮かびながらも一瞬で消え、桃次郎は敢えなく死亡しました。