昔、自分が学生だった頃、今で言うと陰キャと呼ばれてるような奴らの集いが毎日のように教室でありました。彼らは放課後になると、今で言う陰キャの中心的人物が属するクラスの教室に集いました。
当時の作品はよくわかりませんが、いわゆるライトノベルを教室に持ち込んでは黙々と読んでいる人間でした。
私は、ガリ勉野郎でしたので勉強をする自分の横で軟派な表紙をチラつかせて読んでいる隣の男達(中にはちゃんとブックカバーをつけている人もいましたが)を気味悪いと感じながら過ごしていました。
自分は積極的には関わりませんでしたが、今で言う陽キャと言われるクラスの中心的な人たちは積極的にいじり倒していました。
オタク的CDを持ち寄ってきていたのか、今で言う陽キャの集団がそのCDをからかい始めました。その時に、今で言う陰キャの中心的人物が、陽キャの集団に対して「J-POPという流行らせたコンテンツに乗っかっているおまえらにはわからんよ」的な事をいっていたのを思い出します。
その時、初めて今で言う陰キャの人たちを理解しました。彼らは別に反発心や、満たされない日常を不満に思ってオタクをやっているわけではない。自分の無意識な価値観を揺さぶられたような経験でした。
彼らは別にオタクになりたくてなったわけではなく、自分が素晴らしいと思った物を突き詰めるにあたりオタクになっただけなのだと。
それは本質的には数学検定に必死になる自分となんら変わりなく、あくまでもその対象が外の人から評価されるかされないかだけなのだと。(数学検定が外の人から評価されやすい資格かはともかく)
その後、電車男が書籍として販売され、秋葉原がにわかにテレビで特集が組まれ、ニコニコ動画というコンテンツが生まれて、「オタク」はありふれました。
いやでもオタク文化が目に入り、パソコンを触っていればそこそこそういう知識は分かる程度にまとめられたコンテンツは増え、気がつけば水樹奈々は当たり前のように紅白に出場し、小林幸子は「千本桜」を歌うような時代です。
今のオタクは、言ってしまえば「J-POPという流行りに乗っかっている」当時の今で言う陽キャと変わりないのだと思います。
私はスマホゲームを良く嗜み、5chのスマホアプリスレで情報収集をしていますが、上記のことをものすごく感じます。
必ず「セルラン」「覇権」という言葉がどのスレにも出てきます。アニメであれば、「覇権」はよく聞きますよね。私はこの言葉がどうファン達に聞こえるのかわかりませんが、とても無意味ではないかと感じます。
なぜなら、オタクは流行に乗ってやるものじゃないと最初に話したエピソードで感じているからです。
いまでも語られる名作ゲームとしてデモンズソウルを例にあげます。私はデモンズソウルが大好きなのですが、このゲームはもうすぐオンラインが終了するということで最近またキャラを作っては嵐の祭祀場に通っているのですが、このゲームは覇権でもなんでもないですし、そもそも売上もじわ売れですし、どちらかというとダークソウルから入ってきた人のほうが多いのではないかと感じます。覇権でもないゲームなのに、名作として扱われ、ディープなファンがいて、ソウルシリーズとして続いていますよね。
だったら、アニメやスマホゲームで「覇権」「セルラン(円盤の売上)」という言葉が当たり前のようにでてくる現状ほど、オタクが「流行りモノに飛びつく人間」という意味になってしまっていると感じます。
同人誌で、簡単に描く作品を変えてしてしまう同人作家を「いなご」と言いディスる。
おかしなものです。オタク自体が「流行りモノ」を追いかけて移動しているのに、同人作家という発表者が流行りモノ(または流行りモノのついていくユーザー)を追うことを咎めるのは。
今でも真実か冗談かはさておき「なのは完売」という言葉を見かけますが、これほどオタクを象徴する言葉はないと思います。「なのは」という今では覇権でもなんでもないコンテンツが「すぐに売れてしまうコンテンツ」だと認識されているのです。
もちろん、作品を知る機会として「流行り」は重要です。しかし、コンテンツの楽しみ方までもが「流行り」であるようにしか今では感じません。
「オワコン」という言葉があるのがまさにコンテンツの楽しみ方が「流行り」であることの証明でもあります。
私が学生だった頃、教室に来ていた今で言う陰キャ達がどうなっているかは私にはわかりませんが、彼らは当時そうではなかった。私がみた「昔のオタク」像のせいで「今のオタク」がオタクに見えていないだけなのは重々承知していますが、今のオタクは当時の今で言う陽キャと同じ人種にしか見えない。
そして、当時、今で言う陰キャの事を気味悪がってたくせに、アニメやらゲームやらをやっている自分も、ただの「今のオタク」にすぎないのだろう。
オタクに馴染めないオタクは許して
なんかしらんが近代文学っぽい
そういう「オタク」のレトロニムとして「キモオタ」という言葉が出来た。