「俺、ゲームやめるわ」
先輩のゲーム実況を見ていると、世間話でもするように突然言われた。
「え」
未来に絶望していた俺をこのグループに誘ってくれた恩人でもある。
「ゲーム仲間がさ、ゲーム中に倒れたんだ。それで、過労死だってよ。笑っちまうよな」
先輩はそう言いながら、笑って見せたが、その顔は半分泣いているようだった。
「そうすか…」
もっと気の利いたことが言えたらいいのに。そんなふうに思った自分を見透かしてか先輩は楽しそうに言った。
「でもさ、悪いことばかりじゃないんだよ。初めて他人とマジで話すことができたっつーか?まぁ来年就職だしオレもゲーム辞めなきゃいけない身になったってわけよ」
恐らくこれは本音だろう。先輩が楽しそうにコントローラを操る感覚が画面を通じて伝わってくる。
先輩がいなくなってしまう悲しみ。
そんなものより自分に去来した気持ちは「自分はこの先どうするんだろう」という不安だ。
そんなふうに思っている自分の気持ちに気付いているのかいないのか、先輩はゲームをプレイしつづける。
すると突然ゲームが止まって画面も変わった。
「ここさ、オレの秘密のスポットなんだけどよ。お前にだけは教えてやるわ」
普通の夜景なのだが、先輩の指差す先には輝く都会のビル群が見えた。
「この夜景は日本一だってよ。女に見せて、あのダイヤをお前にやる、なんて言えばイチコロだぜ」
先輩は無邪気そうに笑った。
小説としては五流