2018-01-28

ゲーム離れの背景

「俺、ゲームやめるわ」

先輩のゲーム実況を見ていると、世間話でもするように突然言われた。

「え」

「だからゲーマーやめるわ」

先輩とは高校の時からの付き合いだ。

未来絶望していた俺をこのグループに誘ってくれた恩人でもある。

からこそ突然の告白に面食らって、何も言えなかった。

そんな自分説明するように先輩は続けた。

ゲーム仲間がさ、ゲーム中に倒れたんだ。それで、過労死だってよ。笑っちまうよな」

先輩はそう言いながら、笑って見せたが、その顔は半分泣いているようだった。

「そうすか…」

もっと気の利いたことが言えたらいいのに。そんなふうに思った自分を見透かしてか先輩は楽しそうに言った。

「でもさ、悪いことばかりじゃないんだよ。初めて他人マジで話すことができたっつーか?まぁ来年就職だしオレもゲーム辞めなきゃいけない身になったってわけよ」

恐らくこれは本音だろう。先輩が楽しそうにコントローラを操る感覚が画面を通じて伝わってくる。

バトン自分の物になる喜び。

先輩がいなくなってしまう悲しみ。

そんなものより自分に去来した気持ちは「自分はこの先どうするんだろう」という不安だ。

自分いつまでもゲーマーを続けていられるわけがない。

そんなふうに思っている自分気持ちに気付いているのかいないのか、先輩はゲームプレイしつづける。

すると突然ゲームが止まって画面も変わった。

「ここさ、オレの秘密スポットなんだけどよ。お前にだけは教えてやるわ」

普通夜景なのだが、先輩の指差す先には輝く都会のビル群が見えた。

「この夜景日本一だってよ。女に見せて、あのダイヤをお前にやる、なんて言えばイチコロだぜ」

先輩は無邪気そうに笑った。

しかし、自分は他のことに目を取られていた。

ゲーマーをやめても、先輩はこれから自分人生を踊りつづけるのだろう。

先輩の実況の画像には、まるで未来象徴するかのように、眩しいほどのビル街の夜景が輝いていたのだから

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