中学、高校と吹奏楽部にいた。6年間トロンボーンだった。高校2年で身長185センチ。なんにもやってないのに。だから手が長かった。苦もなくトロンボーンを吹き続けたのは、それだけかもしれない。
高校の吹奏楽部は県内では有力校だった。馬鹿みたいに厳しい顧問の下で、馬鹿みたいにトロンボーンばっかり吹いた。吹き倒した。
そして、今、自分が大人になって思うのだけれど、大人があんなに部活に入れ込めるものなのだろうか。どこか、一線が、心の中に一線があるのがわかるんじゃないだろうか。あらゆる部活での有名校の顧問をみると、いつも疑問が募る。どうして大人なのに、仕事があるのに、それも教師だというのに、その優先順位を下げて、そこまでして部活にどうして力を注ぐのだろうか。
いや、高校生のときにもう、それを疑問に思っていた。どうして、こんなに、顧問活動に夢中になれるのだろうか、と。怒ってばかりの人だったけれど、たぶん、今の自分のこのつまらない毎日と比べると、あの先生は毎日が楽しくて仕方がなかったのだろうと思う。
とてもうらやましい。
その楽しさを邪魔するから、ヘタな部員を殴ったのだろうと思う。子供っぽい。今はそう思う。そして、そんなに毎日が楽しい大人をうらやましく思う。毎日。毎日。たのしいことばかり。たぶん、あの人は毎日遊んでいたんだろう。ずっとずっとずっとずっと。いつから遊び続けていたんだろう。
とてもうらやましい。
僕だってずっとずっと遊び続けていたかった。子供のままでいたかった。地元で暮らしていたかった。定期的に自己紹介なんてしなくていい世間で暮らしていたかった。トロンボーンパートのみんなとずっとずっとあわせていたかった。
うらやましい。今はそう思う。