2017-12-31

anond:20171230152740

私も工学系の現役研究者だが、全般的にこの意見には反対。

自分目線でだけ考えた視野の狭い意見だという印象を受けた。

臭い実応用研究は認めないわけではないが、大きな評価にはならないという立場です。

以下長文で失礼します。

まずはじめに、産学の役割分担はきちんとなされるべきだと考えている。

大学あくま学術機関であり、本来は「学問」をする場であって、

産業界から見ても独立中立である必要がある。

工学部が実応用を軽視している」って言われてもそれは学問かという問題もあるし、

役に立つ技術企業のために用意してあげる下請け機関ではないので。

研究活動では、新しい方式理論研究し、学問として確立するところまでが大学役割で、

臭い実応用の問題解決して社会製品サービスとして世の中に還元するのは企業の役目。

ここを曖昧にすると、企業でやるべきことが大学でできてしまうなど、公私混同問題が発生する。

例えば、表向きは泥臭い応用研究をやりますよと言って公的研究費をもらえるのであれば、

実際は特定企業が自腹でやるべき課題大学やらせるとかそういうことが公にできてしまう。

「泥臭い」部分にもきちんと学術的な新規性独自性があるならともかく、

税金が使われているんだから特定企業作業下請けみたいなものを許さないためにも

ここはきちんと線引きしておくべき。

ただし、冒頭で「泥臭い研究は認めないわけではない」と言ったのは、

その研究自体価値があるのではなく、そういうことをやる過程で新しい問題気づき

大学でやるべき独自性のある課題に発展したりすることもあるから

(なんでもかんでもダメだと言いすぎると研究範囲が限られすぎるので)

あえて取り組む理由説明できず、ただ自分研究

正当化するために言っているのだとしたらちょっとそれは問題だと思う。

次に学術論文という視点から

論文研究成果)は、大学以外にも企業一般の人も読める人類の共有財産だが、

対象読者としては産学分離の観点からも同じ学術界(学術研究を行う人)に向けて書かれている。

論文を最もよく読むのは本職の研究者だし、論文査読評価するのも研究者

研究者というものは常にいい研究とは何か、どういう研究テーマを選ぶか、

また行き詰まった時に次どうするか、そういうことをずっと考えてるわけで、

論文というのはまさにそういう時の研究者アイデアの源泉としての役割が強い。

で、研究者として自分がその立場に立った時に

「当たり前のことを当たり前に努力して当たり前のものができました」

という論文があったとして、進んで読みたいと思うだろうか。

このように考えると、学術界への貢献とは何かが見えてくる。

論文(や研究者)の評価指標であるインパクトファクター

研究者の考え方や研究方針にどれだけ影響を与えたか」に重点を置いているように、

論文読み手に大きな影響を与えることが、学術界に対する貢献とされている。

学術界の誰もが読みたくない(影響を受けない)論文評価がどうしても低くなるのは仕方がない。

もちろん、たまたまその技術実用化しようとしていた会社がいれば

この論文研究結果はそのまま使えるってなるのかもしれないが、

それは学術界に対する貢献として評価できないし、産業界に対して中立とも言えない。

また、全ての分野ではないかもしれないが、

私の研究分野ではその技術を専門に扱う会社がある。

学会で知り合ったその会社社員は発表されている論文を全てチェックしていて、

製品化できないか検討を進め、(おそらく泥臭い部分を解決して)

製品化やサービス提供することでご飯を食べている。

これに関しては良い役割分担だと感じている。

企業というものは、儲かるとなれば少々泥臭くても大変でもやるもので、

大学生個人卒検の1〜2年でできる範囲の泥臭いことぐらい、儲かるとなればどこでもやってるからね。

大学が実応用を考えていないから世の中に還元されていないというのは勘違いに近いと思う。

(逆にいうと、別に就職しても、会社を選べば企業立場から研究みたいなことができるということ)

また逆輸入で、研究界で生まれ研究の泥臭い部分をある企業解決してサービス化し、

今度は研究室でそのサービス契約してさらに発展した問題に取り組むみたいなことはよくあるけどね。

>「企業でも出来る実応用のステップ企業に任せるべき」という点については必ずしもそうであるとは思いません。もしそのような姿勢を取り続けると、「営利価値がある」と企業判断したものしか一般人アクセスできなくなってしまます

その上で、これは自己矛盾してると思う。

そもそも営利価値がない」と判断されるものは世の中に還元する必要がない役に立たない研究では?

(あるいは、ニッチすぎてお客さんが集まらず採算が取れない、であるとか)

言い換えると、企業価値のあるものはきちんと取り組んでいる訳で、

それ以外のもの大学研究してるとすれば、わざわざ税金を使って価値の低いことに取り組んでることになる。

(もちろん「すぐに役に立たない」研究もあるが、その場合独自性新規性のある学術問題があるはず)

企業場合はその技術に取り組むか厳しく審査を行い、

やるとなったら自社のお金で取り組み、失敗した場合自分責任をとるわけだけども、

好き勝手研究テーマを設定できる大学みたいな公的機関自分の好みでテーマを設定し、

企業も見ていないような技術の実応用に取り組んでいるとすれば、その方が税金無駄と思わないですかね。

>実応用のための泥臭い部分を投げっぱなしにしているから、世間一般から大学は好き勝手やって金を無駄にしている」みたいなことを言われてしまうのだと思う。

ノーベル賞受賞者研究Nature や Science みたいな

基礎科学系の雑誌でも工学系の雑誌でもいいけど、

実応用で新規性の少ない「泥臭い」ことで評価されてる論文がどれだけあるでしょう。

そう考えたとき、私には「大学は好き勝手やって金を無駄にしている」っていうのは

しろ実応用とか泥臭いことをやってる人のことを言ってるように聞こえてます

企業でもできることを税金でやる方が無駄遣いだと思うし、

税金を使うからこそ、大学しかできないことを模索するべき。

ただでさえ今は研究費もポストも削られ、学生数まで減ってるんだから

>眠っている研究成果を一般に届けるための「研究」に力を入れたほうがよほど産業界にも有意義

上にあげた理由で、企業がやるより大学でやる方が「有意義」という部分が疑問。

大学でやれば「無料」という発想をしてたりしてないですかね)

仮に有意義でも、産業界から独立中立であるべきであり、

大学では「社会に役に立つことをやっていれば何をやってもいい」というのも間違い。

つまるところ、大学などの学術界の研究成果では

本来産業界に対するメリットを言うべきでは無くて、

学術界に対して(学問として人類の知恵として)自分研究

どのように貢献しているかをうまく説明できれば良いと言うことであって

それを一言で表すのが「新規性」とか「独自性」っていうことかと思う。

あとは、大学は(多かれ少なかれ)税金が投入されている

(=研究お金がかかっている)という側面を考慮することかなぁ。

こういう立場自分研究見直してみるといいと思います

補足として、案外企業から増田さんがやりたいようなことをやってる企業

割と多いと思うので、そういう道を模索すると適職が見つかるかもです。

学術界に近い業務内容で、実応用研究をやるような会社職種ね)

記事への反応 -
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