2017-12-19

ウーマンラッシュアワーのどこが「面白くない」か

ウーマンラッシュアワー漫才賛否両論話題になって大変結構なことだ。

政治ネタ、際どいネタがたくさん入って刺激的だったのは良いが、一方で面白くは無かった、という声も多く聞かれる。

なぜ面白くなかったのか、いくつか理由はあるが、おもに漫才構成観点から指摘したい。

序盤は良かった。軽い吉本批判芸人批判から自虐。緊張と緩和、高慢さと滑稽さの落差が大きく笑いの量も多かった。

続いての原発ネタも同様に社会批判的でありつつ、福井で夜間に電気がついておらず電気必要ないという発電量とのコントラスト。背景に発電地と消費地がなぜ違うのかという社会問題はありつつ、それが気にならないほどの落とし方。ここが一番笑いの量が多かった。

その後は、そこに住みたい人はその地に対する愛情を示せ、そうでなければ住ませない、というやり取りのミニコントが繰り返される。ここからがややこしい。

始めは福井新幹線かがやき福井に来る30年後には福井高齢者は星になって輝いている、というかなりブラックオチブラックであることもだが、これを言うことが福井愛を示していることになっているのかわかりにくい。「輝いている」と言うことを肯定的に捉え、褒めている、と言うことなのだろう。まずここで少しつまづく。が、それほどは気にならない。話芸の達者さと勢いで笑える。

次に、東京都民ファースト自分ファーストになっている、と言う都知事批判オチ。これも東京愛になっているのか非常にわかりにくい。都知事東京のためになっていない、それを指摘することが東京愛になっている、と解釈するのか。かなり好意的解釈をすればそうなる。この辺りからほとんど勢いだけで進む。

沖縄熊本に関しては、最も社会派発言として評価されている部分かもしれない。ここは構造的に地方への配慮を訴えることが地域愛に繋がり先述の戸惑いはほとんどない。その代わり、正論になってしまい笑いの量もあまり多くない。とはいえ、ここは次の展開へのネタ振りパートとも言えるので勢いで押し切れば十分と考えて良いだろう。

ここから地域の飛び方自体が笑いとなる。

突然のアメリカ。これ自体は話の飛躍があり面白いしかし、日本アメリカにとって都合の良い国、と表明することがオチだが、これもアメリカ愛なのか疑問。

次に北朝鮮。ここも地域のチョイスは面白いしかし、キム総書記の「単なる太った動物」という悪口自分のことだろう、というオチは、それこそただの悪口北朝鮮愛になっていない。体制に反対している北朝鮮国民目線、ということかもしれないが、説明なしでその設定はかなり無理がある。

最後日本。この展開は綺麗で良い。ここもこれまで同様だが、ニュースの内容が悪いのは国民意識が低いから、というオチ。もはや愛でもなんでもない。

後半は当初のコント構造ほとんど崩壊しており、メインは二人で社会批判を勢いよく言い切る、ということだけが目的化されている。そこを面白さと捉えるなら面白いが、それにしては社会問題の切り取り方に偏りもあり、真面目すぎるようにも見える。この場合意見に対する賛否や見る側の個々の問題に対する距離感面白いかどうかはかなり変わる。

そして一番最後に村本が、「お前たちのことだ」と観客に指をさしながら批判して去っていく。ここでそこそこ大きな笑いが起きる。

これが笑いになるということは、つまりこれまでの社会批判は芯を食っていない、ということを示している。早口でまくし立てていること自体がやりすぎであり、ある種の道化となっているわけだ。視聴者には、このような少しぶっ飛んだ人に少々批判されても笑えるという余裕が生まれている。一段低いところからわあわあ言っている人。そのようなポジションを村本は意識的に作り出している。だからこそ、社会批判が全体として笑いに変わっているわけだ。

これは逆に言えば、社会批判が軽くなってしまう、ということでもある。

上述のように、笑いの構成として整合性にやや無理がある。それはおそらく、強引に社会批判ねじ込んでいるからだろう。その強引さ自体が笑いでもある。

まり社会批判の強さ、正しさと笑いの量は相反するものとなっている。

そうなると、一部で熱狂されているような、よくぞ言ってくれた、という賞賛は笑いの量の少なさ、つまり面白くない、ということの象徴とも言える。

とは言え、これも含めて計算通りなのだろう。笑いの量を減らしても話題性、あるいは自分の言いたいことを言う、と言うネタなのだ。その意味では、大いに成功していると言える。一方で笑いが多少犠牲になってしまたことも否めない。

今後、同じようなスタイルは難しいだろう。今回は話題性としては非常に良かったが、この先同じようなことを繰り返せば、笑いの量が減っていくか、道化として批判インパクトが失われるか、どちらかに収斂して行かざるをえない。同じ社会批判道化には爆笑問題太田がいる。彼はかなり道化よりだ。

まあ、もともと村本も同じことを繰り返す気もないだろうから要らぬ心配なのだが、一部の賞賛者が期待するような、お笑いに変革が起きて社会風刺が増える、というような形には良くも悪くもならないと思われる。

  • 村本は早口すぎて何言ってるかわからないから ネタがおもしろかったとしてもこっちはずっと「?」の状態なのー そのまま終わっちゃうから未だにどういうネタやる人達なのか謎 バラ...

  • omosiroi

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