東京でエスカレーターの右側に立っている人がいると、後ろから来た人が憎々し気な視線を注いだり、あげくのはてには舌打ちをしたりすることがある。
左側に立っていないということは非常識だと考え、右側に立っている人には義憤すら感じかねない人たちが東京にはいる。
一方、神戸に行くとエスカレーターではたいてい右側に並んでいるので、東京からはじめて来たとき、自分はやや戸惑った。
これはきっとエスカレーターの関西ルールに違いない、関東と関西ではなんでも違うのだ、だが東京のルールが世界の基準なのだと思っていた。
数年後、初めて訪れたロンドンの地下鉄駅で、エスカレーターの左側に立っていると、後ろからやってきた男性にExcuse meと言われた。右側にどけると、男性は左側を通ってエスカレーターを登って行った。よく見ると、みな右側に並んでいる。
その後、世界のどの都市を訪れても、地下鉄のエスカレーターでは乗客が右側に整列していることに気づいた。