確か小学生のころ、某大手商社の社宅のプールに遊びに行くことが何度かあった。
基本的に社員と家族用だけど、社宅住人がいて紹介してもらえたので入れた。
一応有料だけど、小学生の小遣いでも行けなくはないお値段だった。
幼児用が本物の幼児で混みあい始めたのもあって、浮き輪もあるしいっかぁ~、と大人用プールに入り込んだ。
浮き輪でふよふよ漂ったり、浮き輪をビート板代わりにバタ足で進んでみたり
元々泳げるようになったばかりの頃で、楽しくて仕方なかった。
そのうち引率者の兄が俺の存在を忘れて自分の友達と集まって騒ぎ始め
一通り遊んで疲れた俺は浮き輪の円の中に尻だけ入れてケツボートにして揺られてた。
近くを通過した大人の集団の起こした波で、俺のケツボートが転覆してしまった。
パニクりながら浮き輪を探したが、プールの底から水面の浮き輪に手が届かない。
完全に沈んでしまっているので、とにかく息を止めてプールの端のハシゴのところまで歩いて行って、兄の友達を捕まえて事情を話し、浮き輪を回収してもらった。
人間って案外簡単に溺れるんだなというのが良く分かった事件だった。
尤も、俺以外の人間は俺がおぼれていたことを把握していなかったが。
その後、その件は特に取り上げられることもなく、プールも社宅の建て替えで無くなったような話を聞いた。