向かいに座ってた40代サラリーマンという感じの男性が、おもむろに左手薬指の指輪を外した。
私は、ああ、キーホルダーにつけるのかな、と思った。
ビジネスカバンの外ポケット内側にリングホルダーを用意してあって、そこに慣れた手つきで指輪を隠したあと、少しキョロキョロしてスマフォに目を落とした。とても嬉しそうだった。
そういうものがあるのかと驚いた。
新宿に向かうなかで、30代の新婚さんに見えるカップルが乗ってきた。もうほろ酔いで、今にもキスをしそうな雰囲気だった。
少し辟易しながらも、どうぞお幸せにとしか思うことができなかった。
隣に座り込んできた20代の残業終わり風の男性のシャツが半分出ていた。伸びた爪でソーシャルゲームをにこにこやっているのが窓越しにわかった。