子供の頃、電車で席を譲ったり、別に譲ってなくてもただ隣に座ってお喋りの相手をしただけで飴をくれるおばちゃんってよくいたものだが。
ただただ、おばちゃんとは謎の親切を発揮する生き物だと思っていたし、大人になってしばらくも、そうだと思っていた。仕事の休憩時間にやっぱり、ただ会話をしただけで、おばちゃんパートさんたちは飴をくれた。多いとは言えない給料の中から、毎日職場で誰かに特に見返りを求める訳でもなく配るための飴を各種取り揃える。なんて素敵なんだ。
と、思っていたけれども、去年の暮れ位から、飴を貰う時のシチュエーションに一つの共通点があるのに気付いて、そうか、そうだったのか……!と目から鱗が落ち、がっくりと項垂れた私だった。
去年位から、私は、軽く風邪引いたとか気候が悪いとか部屋が埃ぽいとか暖房が効きすぎているとか、ちょっとした事で激しく咳き込む様になってしまった。
昨日もそんな感じで出先でゴホゴホいっていたら、見ず知らずのおばちゃんが飴をくれてこう言った。
そうか、飴っておばちゃんにとっては必需品だったのか!
そんで帰り道、スーパーに夕飯の買い物に寄った序に飴を購入した私だった。
咳予防に虫歯と歯周病がきになるものの背に腹はかえられないので仕方なく口中に飴を転がしながら、なんか一人だけおいしいものを口に含んでいるのはしのびなく、「あんたも食べる?」と気前よさげについ振る舞ってしまう、そんなおばちゃんに私もなるのである。