anond:20170929092512 #5より。
「保護って言ってもどうするんだよ。それに気づかれないなんて。そもそもあんたは......」
確かに存在感がないと周りから尽く言われてきたけれど。それよりも自分の口からかくも容易く言葉が出てくるのはいささか不思議だったが、どこか懐かしい感覚を覚えるのだった。しかし、何から何まで意図の分からない使命であることに変わりはなかった。
周囲の通りざかる人は増田の奇妙な行動を演劇の行き過ぎた練習と見なすほかはなかった。彼らの視線は大した緊張感を持たなかった。阿呆を見るように訝しげに思ったりクスリと笑う者もいた。もちろん、それは増田の目の前の羽ばたける象が見えなかったからである。
「とにかく向こうの自然公園へ向かう。」黄金の羽をもつ象はそう告げ、急いだ様子でその自然公園へ飛んでいこうとした。
先の衝撃で地面に落としたコンビニ弁当をすっかり忘れたまま、増田は象を追いかける。
「自然公園で何があるんだ?」
象なら乗せてくれよ、急いでいるなら乗せてくれよ、と思わないでもない。それから今までの生活で蓄積されたものが増田の脚をつかんで邪魔をする。彼の足は象よりも重く感じられ、それだけあの象は何の苦労もなく飛んでいるように見えた。増田は走り続けた。
「金髪の女性を挟んで歩いていた二人の女がいただろう。彼女たちは田中の手先なのだ。田中、そう、お前の通う大学の講師。お前が履修して唯一単位が取れそうだった講義の講師だ。奴があの人を『利用』しようとしている......」象は増田を見て焦っていた。だが、どうしてこいつなのだ、どうしてこいつが選ばれたのだ.....。
息を切らして走る増田は走ることに精一杯だった。こんなに走るのは中学校の体育祭でのリレー以来かもしれない。象の不満と哀れを含んだ目配りに彼が気づくことはなかった。彼は田中という名前を聞いて大学の印象的な場面を思い出しつつあった。そこに先ほど見た女性と同じような格好をした人がいた。背丈も同じ、金髪の女性だった。そこに彼女はいた。あ、あの......!
象に目をやると空の色が真っ黒に変わっていたことに気がついた。
https://anond.hatelabo.jp/20170929072844 #4より 果たしてそれは、金色に輝く巨大な翼を持った象だった。 象は一度咆哮すると、翼をはためかせて増田の眼前に降り立った。 その衝撃で増田は...
anond:20170929092512 #5より。 降臨した象の唐突な使命に増田は戸惑いを隠せなかった。 「保護って言ってもどうするんだよ。それに気づかれないなんて。そもそもあんたは......」 確かに...
anond:20170929160222 はてな匿名ネットリレー小説 #6 より 次の瞬間、増田の身体は宙に浮きあがり、黒い空に向かって落ちるように吸い込まれていった。 あっという間に視界全てが漆黒...