ハマった男はリアコ製造機。
入った給料は遠征の交通費とライブのチケット代にすべて消える。
彼を見に行く為ではなく私のことを見られに日本各地を飛び回る。
私のことが見える席じゃないと嫌。私がここにいることを彼に知らしめないとライブに来た意味は無い。
確かに好きだし、かっこいい。でもそれはあくまで後付けな感情なような。彼のことがはちゃめちゃに好きな自分、そこにアイデンティティを見出してしまった。どんなに彼が情けなくて、無様で不格好でも、私は彼のことを褒めて好きでいなければならない。だってそれがみんなが知ってる私だから。
あの頃は沢山彼とお話できたし、身近なアイドルって感じだった。グループ自体もマイナーだった。名前を言っても誰も知らなかった。今では立派なアーティスト。あー!知ってるよ!と言われることが格段に増えた。元々近くはないけれど、さらに遠く感じることが増えた。
多忙な日々でも私のことを忘れてないだろうか、この間話した内容を彼は覚えているだろうか。
無謀だとは分かっていても心のどこかで彼の特別になりたかった。そしてこんなに遠い存在になってもその淡い期待が消えない。
貯金も底をついた。クレジットカードの返済もまだまだ終わりは見えないし、限度額の限界も迎えた。給料日まで3000円で生活しなければならない。