2017-07-16

手だけでも持って帰りたい

23:11心肺停止確認

波乱万丈を地で行く人生だった、戦火の渦に巻き込まれながら山梨疎開女学校に通い大学勉強しに行き、女学校先生プロポーズされ、お見合いの話は妹に譲り、就職した会社で熱心な宗教信者に見初められ、逃げるために慌てて結婚した男は姑が鬼よりも鬼のよう。「お前の腹を借りて私が産んだんだ」と言いながら包丁を持って追いかけられて鬼姑から裸足で逃げた夜もあった。夫は何も言わなかった。

それでも人には恵まれたと言っていた、女学校から友達と80を過ぎた今も連絡を取り合い携帯メールをし、親戚との付き合いも多く、忙しい娘に代わって孫の面倒を見た。

こんな孫でごめんね、腕だけでも持って帰らせてほしい、娘も息子もだかせてもらえず仕事をしながら家事をやり姑を看取り孫を育て孫の家の家事をして夫の介護をして、人の何倍も働きながら人の心配ばかりして、最期まで自分病院電話をかけた。

腕だけでも持って帰りたい。ひんやりしていた、人の何倍も働いた、よく撫でてくれた腕だった。

眠ってるみたいだ。

信じられない。

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