初めて入ったワコールの試着室。店員さんに驚愕の事実を聞かされてから、はや二週間。
比較的ほっそりした身体の両親の血を引き、私もどちらかというと細身の体型で育った。
母はずっとAカップのブラジャーを付けていた。そんな母に「あんたもその感じじゃAカップだね、かわいそうにねぇ」なんてからかわれながら宣告されたのは高校生のとき。
もともとお洒落にとても無頓着だったこともあり、特に悲しんだこともないし喜んだこともない。まぁ、こんな体型だし、胸は全くないことはないし、Aってこんなもんかなと思って生きてきた。
私は傍目から見ても普通に小さな胸の持ち主だと思う。歩いてもボインボインと揺れないし、斜めがけバッグの紐が身体の中心にきても、恥ずかしいと思ったことはなかった。
ブラジャーとは胸の大きな人が付けるもの、という固定概念があったので、ブラジャーのつけ心地に違和感があることは自然なことなんだと思っていた。
私は普段A65の、1番狭いところでホックを留めていたが、カップから飛び出る乳房に対し何も思ったことはなかった。
ブラジャーを付けるとみんなこんな風にカップから乳房が出ると思っていたし、時間が経つと乳房の上半分がカップから溢れて乳首が出てしまって、トイレの個室で時々修正することも、恥ずかしいからみんな言わないだけで、していると思っていた。
あの母の宣告から10年が経った。普段私にあまりワガママを言わない夫が「もう少しお洒落なブラジャーを付けて」と言ってきたので、二週間前、初めて天下のワコールに足を踏み入れた。
店員さんは私の状態を一目見るなり、サッと試着室から出て行った。なんだなんだと待っていると、見覚えのない大きさのブラジャーを持ってきた。「お客様、こちら一度お試し頂けますか?」。タグを見るとD65。え?デーカップ??
結局、きちんとメジャーで測ってもらい、私の正確なブラジャーのサイズはE65だと判明した。
Eカップのブラジャーを付け始めて二週間。上半身がとても楽になったし、カップから乳房が出てくることがなくなった。押さえつけられる感覚もなくなり、ワイヤーの痕も強く残らなくなった。
私がもっと早く胸の知識を得ていたら、もっと早く楽になれていた筈だ。
Eカップというのは、歩くと揺れるようなボインボインの胸だと勝手に思い込んでいた。がボインボインじゃなくてもEカップに該当する人間はいるのだ。
細身で自分は貧乳だと思っているけど、何故かブラジャーがすぐダメになったり、乳房がカップから出てしまう人は、是非プロに測って頂くことをお勧めしたい。
今まで知らなかった楽さを体感できる筈だ。