賃金は安いし、ノーといえない下請け仕事も多く、採算度外視で全力を注ぐ羽目になる業務がさしこまれ、
ひどい残業。
ビジョンも現場と上とが食い違っていて、どこに向かっていいのかわからないまま
みな目先の仕事で手一杯。
だれも経営してない、いつまで体力がもつかわからないっていう、
スペックの詳細は隠すけど、仮にAと呼ぶ。
こんな零細にそんな人、なんでこんな会社に応募してくんのか、
それを見抜く力のない社長は、
やたら高スペックのAをチャンス、とでも思ったのだろう。
Aはきりっとした様子で、晴れて入社日にやってきた。
零細に突如あらわれた高スペックのAを、みんながまぶしく思った。
なにより人当たりがよく、入ってすぐ古株の社員と打ち解けた。
Aは慣れないながらも、一つひとつ、
与えられた仕事を着実にこなしていたように思う。
少しクオリティは甘いかもしれないが頼んだ方も気持ちがよくなる、そんなタイプだった。
そんな彼が、あることをきっかけに、
突如、会社に来なくなった。
そういう日が何日か続いた。
電話をしても、つながらない。
何回かけても、かかってこない。
しばらくつながらない状態だったが、
ある日、Aから連絡が来た。
「体調が悪くて、出社できず申し訳ない。なんとか生きている」、といった内容だったようだ。
いったい全体、どんな体調なのか…
様子を見に家に行こう、という案が出た。
という連絡が来た。
なんだ、よかった、と上司はほっとした。
……
そこからどうなったかというと、彼は、もともとある病気を抱えていたとのことで、
今も休養中だ。