2017-06-24

Lv.100になる頃には

「さあ!勇者よ!魔王を倒してくるのじゃ!」

国王に見送られた僕は取るものも取らず生まれ育った街から放り出された。

ただの図書館司書の僕がなぜ。なんでも背中伝説翼竜をかたどったアザがあるかららしい。

(これは中学時代地元の不良に石をぶつけられたときにできたものなのだが)

国王からは出がけに錆びた剣と亀裂の入った鎧兜、そして500ゴールドだけを渡された。

(この国の一ヶ月の平均賃金は47000ゴールドだ)

隣町へと続く大草原を歩いていると盗賊出会った。

頑張ってポコポコ殴っていると盗賊薬草と3ゴールドを落として逃げていった。

その後、隣町へ着くまでに2日かかった。その間僕は死にそうになりながら都合7人の盗賊を退治した。

(この国には総勢1,937,768人の屈強な成人男性から成る警察隊が各地に配備されているのだが)

町は今風の若者で賑わっていた。みな僕を避けるようにしてこちらを凝視している。

こんな大仰な鎧をカチャカチャいわせて歩いていればそれも当然だった。

(主張しすぎない無地Tとデカ目のスニーカーでコーデ全体のバランスを取るのが今夏のトレンドだ)

宿屋へ泊まると僕は疲労でベッドへ倒れ込んだ。

体が痛い。節々が熱を持っている。血の味が口の中へ広がっている。

混濁した意識の中でうなっていると薄い壁を通して隣の部屋から男女の声が聞こえてきた。

「めちゃくちゃ可愛いよ」

「あっ…!あぁっ!そんなとこ恥ずかしい…」

「すっげぇエロい…もう我慢できないから入れていい?」

その声をきっかけに男女はセックスをし始めた。

(僕の小型電子ファイルには先日B級アイドルからセクシータレントへと転身したエレナレナ動画が入っているのは内緒だ)

何かがおかしい。僕の人生は何かがおかしい。でも何がおかしいかは分からない。

とりあえず早く眠りについてしまおう。

明日はアセモ火山で火の紋章を手に入れなければならない。

明後日はミズムシの泉へ足を伸ばそうか。

その次は、

その次は、、

その次は、、、

僕にはやらなくてはいけないことがたくさんある。

くよくよするのはもうよそう。僕は勇者なのだから

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