2013年に安倍晋三が総理に就いた後、アベノミクスと呼ばれる大規模な金融緩和と機動的な財政出動によって、名目GDPは47兆円増加した。2017年第一四半期の経済成長は年率で2.2%と、潜在成長力の0.7%を大きく超えている。失業率も2.8%まで下がり、ほぼ完全雇用状態だ。20年間のデフレによる経済停滞で錆付いていたギアが徐々に回りつつある。ここ数年の日本の経済政策は成功を収めつつある。しかし、アベノミクス第2弾の中心にある働き方改革は成功しそうもない。
1.働き方が問題?
そもそも長期的な成長力を示す潜在成長力は、土地、労働力、資本ストック、生産性の上昇率からなる。日本は人口減少社会に突入しているので、土地、労働力、資本(人口減社会に投資が集まらない)は停滞かダウントレンドにある。つまり成長戦略には、生産性を軸にするのは極めて正しい。ここで、具体的な課題として取り上げられてるのは、以下の問題だ。
b.長時間労働
お分りだろうか?働き方改革は、日本の生産性の低さを主にミクロな労働の現場に帰責している。例えば、人も金も突っ込んでいるのに儲からないのは、社員が身分制のように正社員とパートに分かれており、テキパキ働かず、無駄な残業をし、ずっと同じ会社に勤めているからだという話だ。スタートアップが「日本の生産性を上げたい」など言い、単なるSaaSを提供するのとノリは近い。
実は日本の労働時間は、「24時間働けますか?」と言っていたバブル時代と比べても20%ほど減少している。つまり20年間経済停滞したものの、単位時間あたりの付加価値は上がっている(テキパキ度上昇)。しかし、OECDの生産性ランキングは落ち続けている。生産性は購買力平価ベースのGDPを就労人口で割って出す。つまり分子の売上が一定なら、いくらテキパキ働いたところで全く影響がない。有名な話だが、日本の祝日は16日あり諸外国よりも多い。テキパキ働き、休みを取らせることを強制すると、使用者の労働コストが上昇するので、結果的に給与が減額されるのを恐れたサラリーマンは有給を取らないどころか、休日返上で働き出す(パソコンの電源を切って働く、退勤打刻をした後に働くなど)。結局、今の労働環境の延長線上にある光景ではないだろうか。※もちろん、労働法的な論点も重要だが、成長戦略とは別途取り扱うべきだ。
当たり前だが、高い生産性というのは、同じ労働力でも、より高い付加価値を生み出す。つまりビジネスモデルの問題で、ここで帰責されるべきは、個々の労働者ではなく、労働集約的なビジネスモデルを維持している雇用者と、うまく生産性で競争する環境やチャレンジを促進するセーフティネットを用意できない行政にある。マクロ的な(ケインズ的な意味ではなく)産業育成構造に問題があるのに、ミクロの労働者に責任を転嫁してきたのが、バブル崩壊以降の日本の現場だ。ワークライフバランスの議論は定期的に盛り上がり、クールビスだの、プレミアムフライデーだの国辱的な施策が残る。日本人ビジネマンは自分で着るものも、働く時間も自分で管理できない。そのような古い産業を残しているのは誰?
何故、このような労働者に帰責する生産性議論が延々と続くのかと言うと、政労使に、社会を変えるインセンティブがないからだ。
政治家:大企業との繋がりが深く、新興企業との競争を促進することが難しい。労働者に飴を与えれば票が入る。
労働者:企業の中にいるうちは、新たな競争に晒されることを望まない。労働時間短縮の飴がもらえる。
使用者:略
これでは、全く自浄作用が働かない。
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http://www.meti.go.jp/committee/summary/eic0009/pdf/020_02_00.pdf 各論点はバズワード満載で耳触りが良いので、TLでは、概ね「今の論点がまとまっている!」や「日本ヤバい!」、「熱い!」みたいに...
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