芸能人っていうか、声優以外が吹き替えやると必ず叩かれるよな。「プロの声優を使え」とか。判を押したように。その作品も見ずに。
で、そんなにダメか?ダメな作品は何個あるんだ?10か?20か?こういう質問をすると、大体帰ってくる返事(作品)はお決まりだよな。シンプソンズとか。あとなんだ?ジャッキー・チェンの「80デイズ」か?イクサー3でも例に挙げるか?
実のところ、ひどい作品って少数じゃねーのか?
で、それをネットの声のデカいやつらが脊髄反射&定型行動的に叩いてるだけなんじゃないのか?
この話題でよく俎上に上がるジブリのキャスティングも、はっきり言って全然大丈夫なレベルだろ。
「声優を使え」っつーのは要するに、「自分が知ってる人が出てるのが見たい」だけなんじゃないのか?だとするなら、芸能人出演を望むのと全く同じ目線だよな。
最近の芸能人というか、アイドルや芸人って、演技上手いだろ。こんなこと言うと、また「声優はプロなんだから」と言い出す奴がいるけどさ。どうなんだ?テレビや舞台で毎日のように「演じている」人って、声優養成所出ていくつかのアニメやゲームに出てる人に比べて経験値は圧倒的に高いんじゃないのか?個人的に、芸人全然OKなんだけど。だって上手いもの。声の張りもあるし。しかも吹き替えの場合、演出や脚本の出来は保証されてる(ことが多い)。だから多少の演技の粗は気にならなくなるのも大きい。演出と脚本と知名度と人前に出る経験とある程度の演技力があれば、それは「プロの声優」に並ぶんじゃないのか?
なんでこんなことを書いたかというと、さっきピクサーの「Mr.インクレディブル」を見たんだよ。古い映画だけど。ピクサー作品はこれだけは見てなかったから、見てみようと思って。
ピクサーとディズニーだけは吹き替えで見る、と決めてたから、これも吹き替えで。
で、これがもう、めちゃくちゃ面白かったのよ。もう最高だった。なんで今まで見てないのか自分を殴りたくなった。これ大好き。
「スーパーヒーロー物かぁ…」って、当時はスルーしてたんだけど、大失敗だった。これを読んでる、同じく敬遠した人にもぜひ見てもらいたい。これは愛おしい。
これはヒーロー物じゃなくて、夫婦物だった。奥さんが旦那の浮気をうっすらと疑う時の仕草が最高。仕草っていうか、旦那の浮気を疑い始めるときって、怒りじゃなくて戸惑いと不安が先に来るんだよね。あのシーンはもうすっごい心に来た。ラストのクライマックスで、街が大変なことになってるのに運転席の旦那と助手席の奥さんが道順について言い争いをして後部座席で子供がゲンナリするところとか、(懐かしの?)夫婦あるあるネタが自然に演出・演技されてて素晴らしかった。お姉ちゃんと弟も、語彙が乏しくてアレなんだがもうマジで姉弟ってこんな感じだよなって。スーパーヒーロー物で、それぞれ明確な能力が振り分けられてるのに、「こいつはこういうキャラ」って明確に記号化されてないのがよかったのかなと思った。いわば、アニメ的なキャラ付けが薄いともいえる。だからお姉ちゃんのティーン感が際立つし、奥さんの奥さん感&オカン感がすっとなじむ。最後の最後エピローグのあのシーンなんてまさに「普通の家族」なのに、叫んでる台詞がインクレディブルなのでめちゃくちゃ面白い。あのシーンだけでも何度も繰り返してみちゃう。今も流してる。最高。
で、この作品、エンドロールで初めて知ったんだけど、「プロの声優」はメインキャスティングにはいないんだよね。それでこれだけ面白い。これだけの演技を見られる。それで十分なんじゃないか?芸能人?俳優?アイドル?芸人?いいじゃん。すげぇじゃん。面白いじゃん。彼らを使った「ひどい映画」が10個、20個しか挙がらないんなら、それで全然行けるじゃん。それ以外は文句がないか、いい吹き替えってことでしょ?
「この世界の片隅に」のすずさんを演じられる声優は誰かいるのか?っつー話だよ。のんは駄目だったのか?よかっただろ?ならそれでいいじゃん。
なんかどうも、こういう声優非声優の話で噴きあがってるのを見ると、冒頭にも書いた「脊髄反射&定型行動」っていうネット民のお決まりのパターンなんじゃねーかと思う。