3つ下の婚約者は研究職ではなく、学歴は出身大学名しか分からない人なので、すごいと言ってもらっている。しかし、客観的に見て、自分の業績は大したことがない。
正確に言うと、うちの分野では重視されるトップカンファレンスには何報か筆頭で通しているので、同業者にはそこそこ名前を知ってもらってはいる。が、ジャーナル本数が少ないので、ジャーナル中心の他の分野の方から見ると、いかにも低業績に見えるだろう。
今のポストは任期付き。任期後に、どこでもいいからパーマネントの教員/研究ポストに就きたいが、このままだとジャーナル不足で絶望的だ。
ただ、分野的に、いつでも企業に転職はできる。35歳後半になっても、探せば正社員待遇で取ってくれる企業はあるだろう。
正直、同じ世代の同分野の日本のアカデミアトップ層に比べれば、私の業績は見劣りする。彼らトップ層は、形の上では私と同じ任期付きだが、業績&PIとの関係から考えて、将来安泰な人ばかりだ。要は、理由がないからうつらないだけで、どこでもいいから日本の任期なし研究・教育ポストにつきたいと思えば、それができる人たちだ。
私は、そうではない。どこでもいいから日本の任期なし研究・教育ポストにつきたいと思っても、私の現在の業績では無理だろう。
婚約者は子供を望んでいる。周りを見渡せば、皆、子供を作ってアカデミアに残っている人は、パーマネントポストを取ってから作っている。
パーマネントポストを取らずに子供を作るということは、研究を諦めるということと同義だ。
子供もできていないのにそこまで考えるのもどうか…そもそも結婚しても子供ができるとも限らない…とも考えた上、婚約者の強い押しもあって、婚約してしまった。が、結婚してから、子供ができてから、では遅い。
婚約破棄費用も検索してみた。もちろん、正当な理由による破棄ではないが、「キャリアの事を考えると、子供ができることを考えた場合、お互い不幸になるとしか思えない」という理由付けなら、悪質ではない。婚約破棄費用はせいぜい80万円程度だろう。
大金だが、結婚後の離婚にかかる総費用に比べれば、大した金ではない。離婚は相手が拒否した場合、成立させることが困難になるが、婚約は、片方が拒否して費用さえ払えば、確実に破棄できる。
少子化の時代に云々と言われるかも知れないが、私は別に天才ではないので、たとえ子供ができたとて、子供が天才になるとは全く思えない。むしろ、頭の悪い私の子など、生まれてこない方が、この国のためなのではなかろうか。
国内トップ層を走っている30代の方は、どんどん子作りをしている。彼らは、子育てに時間を割いても、この国のために研究教育を通じて貢献できるほど優秀だからこそ、それが許されるのだと思う。
私は彼らほど優秀ではない。研究教育と子育てを両立させたら、研究教育の質が下がるに決まっている。私の何倍も頭がいい日本トップレベル研究者ですらそうなのだ。結婚して、私の業績が下がらないはずがない。
家庭第一ながら、素晴らしい業績を出している年上の研究者も知っている。家庭を第一にした方が良い、というアドバイスを親身になさる年上の研究者も知っている。しかし、それは、彼らが優秀だからできたことなのではないか。
彼らの他に、敗れ去った人が多くいるに決まっている。生存者バイアスだ。
大して頭の良くない私が、頭が悪い子供を作り、トップ研究者を仰ぎ見ながら、出来もしない家庭と業績の両立をしようとしたところで、能力不足で失敗し、両方とも質の低いレベルにおさまるのが目に見えている。
それは、家庭も、私も、そして、間接的に研究費を私に与えてくださっている国も得をしない、誰も得をしない失策なのではないか。
婚約者との中は良い。好いてもらっているようだ。私も好いてはいる。しかし、ここは、相手のためを思うなら、相手が泣きわめいても裁判沙汰になっても、婚約を破棄するべきなのではないか…という疑念が頭をよぎる。
難しい。悩ましい。
2作目、いや二匹目のドジョウ、というやつでね、同一人物によるwwww
自分の婚約者と少し状況が似ていて、読んでいて悲しくなってしまいました。おっしゃる内容は正論だと思います。私も彼のため別れを選びました。 だけどとても悲しくて、何か他に良...