家からのんびり歩いて3分ほどの場所に個人経営(だと思う)のおいしいパン屋さんがある。
いまの家に越してきてから、何度かパンを購入しているのだが、ここのお店、“クロックムッシュ”がすごくおいしいのだ。
クロックムッシュって、名前はなんとなく知っていたけど今まで買ったことがなかったのだが
はじめてこのお店に入ったとき、小さなお店の小さなカウンターに、他のパンたちと共に、しかしなんだか他のパンよりも大切そうに
ワックスペーパーに包まれた少し細身の紳士が目に飛び込んできた。
思わず買って帰り、さっそくほおばってみる。
おいしい。
チーズの軽くこげた香ばしいかおりと、中から顔を覗かせたベシャメルソースがとてつもなくおいしい。
これは、なんだかすごく、おいしいぞ…?ともうひとくち、と顔を近づける。
が、ふと思いついた。
あたためなおしたら、もっとおいしいのでは…
いそいそと、お店にあったときのように大切そうにラップをかけ、重たいレンジの扉を開け、紳士を閉じこめる。
軽くあたたまったところで取り出し、お待ちかねのふたくちめ。
うまい!!
こんなにおいしいなんて知らなかった。
あたたまったことで、中のソースが先程より積極的に外に飛び出ようとするのに引き込まれ、ほかの具材もいっしょに口のなかに飛び込んでくる。
ソースの絡んだしんなりとした玉ねぎがおいしい。控えめに存在を主張するハムがいとおしい。
そして何より、ソースをじんわり吸い込んでやわらか~くふんわりとそれらを包み込むパンが、最高においしい!
なぜ自分はこのパンの存在を今まで無視していたのかと、これまでの人生をほんの少しだけ後悔しつつ間髪入れずに食べきった。