「へぇー、この時代でも直立だなんて。よほど悔しくて、力いっぱい突き刺したんだろうなあ」
俺からすればこういうよく分からない、教訓めいたものは話半分で聞くぐらいが丁度いいと思うのだが。
まあ、ツアーガイドがいる手前、やや過剰にリアクションしているのだろう。
それにしても、棒だと説明されているものの、棒というには妙な見た目だ。
俺の冷めた目線や、逆にタイナイの熱い視線など気にも留めず、ガイドさんは次の名所の案内を始めた。
弟のマスダはというと、ほくそ笑みながら皆の視線をかいくぐって棒を触っていた。
触ったからといって何があるというわけでもないだろうに、ああいうのに対する弟の好奇心には感心するよ。
気が済んで帰ってきた弟の脳天にチョップを食らわすが、悪びれる様子もなく、かといって笑みを浮かべたりもしなかった。
不思議に思った俺は、弟に尋ねた。
「いやあ、棒が思っていたより硬くなかったんだ。むしろ柔らかい」
確かにそれは俺にとっても意外だった。
口元がひくつく。
ちょっと興味が湧いて、もう少し話を聞いてみたくなった。
「ほぅ、どんな感じに柔らかいんだ?」
弟はうんうん唸りながら、自分の語彙力を駆使して説明しようとしていた。
「何というか……そう、ペットボトル! 空のペットボトルみたいな感触だった」
これまた予想外の回答に、俺の硬い表情筋が緩む。
左手で口元を覆いつつ、弟に更に尋ねた。
「うーん、どっちかっていうとコーラとかが入っているタイプ!」
ツアーガイドのしていた話や、あの棒らしきものが本当かは分からなかったが、ペットボトルを振り回す姿を想像して俺たちは思わず笑った。
とある村に、とある少年がいた。 彼は気骨のある若者であると同時に、反骨精神溢れる若者でもあった。 手ごろな棒を片手に村を闊歩して、時にそれを振りかざして見せたり、或いは...