2016-11-25

[] #7-2「少年と当たらぬ棒」

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「そして、少年が突き刺した棒がコレだと言われております

ツアーガイドが、淡々説明をする。

へぇー、この時代でも直立だなんて。よほど悔しくて、力いっぱい突き刺したんだろうなあ」

同級生タイナイはそう呟きながら、感心しきりだった。

からすればこういうよく分からない、教訓めいたものは話半分で聞くぐらいが丁度いいと思うのだが。

まあ、ツアーガイドがいる手前、やや過剰にリアクションしているのだろう。

それにしても、棒だと説明されているものの、棒というには妙な見た目だ。

俺の冷めた目線や、逆にタイナイの熱い視線など気にも留めず、ガイドさんは次の名所の案内を始めた。

弟のマスダはというと、ほくそ笑みながら皆の視線かいくぐって棒を触っていた。

触ったからといって何があるというわけでもないだろうに、ああいうのに対する弟の好奇心には感心するよ。

気が済んで帰ってきた弟の脳天にチョップを食らわすが、悪びれる様子もなく、かといって笑みを浮かべたりもしなかった。

不思議に思った俺は、弟に尋ねた。

「いやあ、棒が思っていたより硬くなかったんだ。むしろ柔らかい

かにそれは俺にとっても意外だった。

口元がひくつく。

ちょっと興味が湧いて、もう少し話を聞いてみたくなった。

「ほぅ、どんな感じに柔らかいんだ?」

弟はうんうん唸りながら、自分の語彙力を駆使して説明しようとしていた。

「何というか……そう、ペットボトル! 空のペットボトルみたいな感触だった」

これまた予想外の回答に、俺の硬い表情筋が緩む。

左手で口元を覆いつつ、弟に更に尋ねた。

「か、空のペットボトルか。お茶とか入りそう?」

「うーん、どっちかっていうとコーラとかが入っているタイプ!」

ツアーガイドのしていた話や、あの棒らしきものが本当かは分からなかったが、ペットボトルを振り回す姿を想像して俺たちは思わず笑った。

(#7-おわり)
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