Kindle Unlimited対象の小説だったので何気なく読んでみた。
作者も知らない。
だが読了後に感じたのは、ベストセラー小説でもなかなか味わえない得も言われぬ充実感だった。
それは、感動でも絶望でもない。
この物語には、現実にいたら懇意にするのが難しい人ばかり出て来る。
だが非現実的でもありながら、キャラクターに妙なリアリティがあるのだ。
やがて登場人物の中に、普段の自分の、そして周りの人の影を見る。
〜〜〜〜(本文一部抜粋)〜〜〜〜〜
『確かにこの男が生徒に腹を立てるのを見たことはない。
だがそれは優しさではなく、物事の感じ方が異質であるからのように思えた。この男にとってすべてはどうでもいいのだ。関心のない番組のように消すのが面倒だから眺めているだけ。
教える義務は果たしているのだからあとは好きにしろという態度だ。そういう教師のほうが何をするかわからない。』
『内職を注意したら襲われたと新垣は説明した。端的に事実を報告するような話しぶりから、新垣が本気でそう認識していると久太郎にはわかった。
理解できないものはすべて悪、そんな単純な世界に新垣は生きているのだ。そこでは無知と悪意は純粋で正しいものとして塗り替えられる。 』
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しかしそれはあくまで、人間性を様々な角度から抉り出すための舞台装置でしかないのだ。
そしてそれだけで面白い小説が書ける小説家は決して多くはない。
ヘリベマルヲはその中でも異質に思えた。
いつか内容を忘れたとしても、自分の中の何かがゆっくりと引っ張られるようなあの感覚を、僕は忘れることはないだろう。
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