いま思い返してもただただ悲しくなるが、
きっかけは、親が強制的に少年野球チームへ入団させたことだった。
野球そのものは好きだったが、ああいう「集団で何かをやる感じ」とか、
「ノリを求められる雰囲気」とか、とにかくああいうのが大嫌いだったんだ。
少年野球への入団は当時の自分にとって相当な精神的ダメージとなり、
周囲に大きな壁を作り始めた。
チームのやつらとは当然口を聞かなかったし、
なんかやばい気がしたんだ。
喋らなくなるとそれはそれで厄介な状況になる。
「無口」「無口」「無口」
周囲に罵られる日々。
表情もなかったし、あれは軽度の鬱だったろう。
小3まで遊んでいた友達とも疎遠になっていった。
ある日、ひとりだけいた友達と話しているところをクラスメイトに見られてしまった。
それでまた心を閉じてしまう。
まさに八方塞がりである。
それでも小学校卒業を迎えるころになんとか立ち向かおうと奮いたち、
中学校卒業を迎えるころには、高校ではもっと話せるように頑張ろうと奮起し、
相変わらず友達は少ないながらもまともに会話できるようになっていった。
今でも飲み屋で馬鹿騒ぎしたり旅行にでかけたりできるくらいの大切な親友ができた。
彼女もできた。
社交性を取り戻したといったけど、正直なところ今でも
人に壁を作る癖は治っていなくて、心を開くのに最低2年はかかる。
「グループ」に属するのも慣れなくて、
数人の心許せる同期と飲みにいくような具合である。
そろそろオチをつけたいわけだけど、
鬼監督には罵られるし、先輩にはボロカスに言われるし、
後輩には馬鹿にされるし、同期ともノリについてけなくて孤立して、
あの雰囲気はどうしても好きになれなかったけど、
野球は好きで、ずっと続けた。
そのおかげで半端ない体力がついたし、
高校野球をそれなりに厳しい環境で耐え抜いたみたいなところは、
なんの取り柄もない自分を評価してもらえる唯一のポイントになったりもしてる。
親も、息子にまともな社交性を身につけさせたいと思って入らせたらしい。
というわけで、今は親にも野球にも誰にも恨みもなにもなくて、
結局は自分の生来のネガティブな性格が根本的な問題なんだと思う。
ひん曲がった性格だけど、こんなんでも付き合ってくれる友人にはとても感謝している。
いま同じように学校で周囲に馴染めない子やもしかしたら話すこともできない子も
いるかもしれないけど、こんな自分でもまともに社会でやってけてるわけだからいまは耐えよう。