つい最近まで、ある地下アイドルを応援していた。地下アイドルにしてはまぁまぁ大きい規模のところで、それなりに大きい会場でライブもしてくれたし地下アイドルだから握手会やチェキ会もたくさん開催してくれた。本当にそのグループが大好きで大好きで、自由に使える時間とお金はほぼ全てそのグループに使っていた。推しくんの事が世界で一番好きだった。ステージできらきら輝く推しくんが、グループの仲間と笑ったり泣いたりする推しくんが、握手会で私の事だけを見つめて私の名前を呼んでくれる推しくんが、大好きでたまらなかった。世界で一番かっこいいと思っていた。いや、今も思っている。
でも、ぶっちゃけこのグループに未来は無いなと思っていたし、これ以上このグループが大きくなる事は無いなと思っていた。でも推しくんが大好きだったし、グループで活動する推しくんは楽しそうだったし、そんな思いには蓋をして見ないふりをしていた。
そしてある日、公式からTwitterで21時からのツイキャスで重大発表があるといわれた。かなり嬉しいお知らせなので期待していてください、とまで言われた。生憎その日はバイトが21時まで入っていて、しかも週末で混むだろうから時間ぴったりに上がれるとも思えない。まぁすぐにTwitterで情報が出るだろうとツイキャスを諦め、重大発表に期待しながらその日のバイトに励んだ。
しかしバイトを終えた私を待っていたのは、嬉しいお知らせなどではなかった。見た瞬間、目の前が真っ暗になって涙が止まらなくなった。
内容は、メンバーの中の3人が、名義を変えユニットとしてメジャーデビューする、というものだった。
その3人の中に私の推しくんはいなかった。
確かに選ばれた3人は、グループの中では実力も知名度も他のメンバーより頭一つ抜き出ていて、3人組としてのバランスも良い。きっとこの3人なら、メジャーでもやっていけるだろう、と思った。
でも、私の推しくんは、今まで頑張ってきた私の大好きな推しくんは、選ばれなかった。
メジャーデビューする3人は、僕達がこのユニットでメジャーデビューして有名になって、母体のこのグループのことを宣伝して色んな人にこのグループを知って欲しい、そのために努力する、どんな活動をしていても全てこのグループのための活動だ、信じて付いてきて欲しい、と言っていた。
3人の中に推しがいる人は、それはもうすごい喜びようだった。私だって推しのメジャーデビューが決まれば泣いて喜ぶだろう。
Twitterを見たところその3人以外推しの人も概ねユニットには好意的なようで、我がことのように喜んでいた。頑張れ、応援する、そんなリプを飛ばしまくっていた。
でも、私はどうしても、ユニットのデビューを喜べなかった。今までメンバー全員で肩を並べて一緒に走ってきたのに、いきなり3人だけ抜けるなんてそんなの有り得ない。ていうか推しくんはなんでいないんだ。世界で一番かっこいい私の推しくんは何故メジャーの世界で輝けないんだ。あの3人はこれから大きな世界に羽ばたいてたくさんの人に見てもらえるのに、何故私の推しくんは見てもらえないんだ。私の推しくんが世界で一番かっこいいのに、なんで。
その時開催していたツアーをもって、メンバーの1人が怪我を理由に脱退が決まっていたのも大きかった。せめてこのツアーの間は、メンバー全員で頑張って欲しかった、そんな思いもあった。
もう、私にグループを応援する気力は無かった。失望した。ていうかどうせこのグループ応援してても、きっと将来性無いし。持っていたライブのチケットは殆ど売り払った。3桁単位で集めていたメンバーのチェキも、本当にお気に入りの数十枚だけ手元に残して、全部手放した。
でも、推しくんの事は好きだった。というか現在進行形で大好きだ。だって推しくんは何も悪くないし、推しくんは今日も世界一かっこいい。Twitterでメンバーのフォローを外す時、推しくんのフォローだけは外せなかった。リプ垢も消せなかった。これからも推しくんの事は大好きでいると思う。それでも、私はもうあのグループを応援することもお金を払うことも無いだろう。
今までありがとう。みんなのことが本当に大好きでした。みんなを応援できて、本当に幸せでした。これからも頑張ってください。いつか大きな舞台できらきらと輝くみんなが見たかった。さよなら。