2016-09-17

私と一緒にいてくれた空想女の子の話

父と許したその日から、その子存在は急速に薄くなった。

今でも思い出せることは思い出せる。

でも、彼女が私の近くにいたときは、もっと、本当にそこにいるように想像できた。

空想の中で話した声は実際耳で聞こえるように。動く表情、髪や体温ある身体の質感。鮮烈にイメージできたのに。

中学時代から高校生時代まで、父親との折り合いが大変に悪かった。

理不尽に当たり散らされていた。私は彼を人間の屑だと軽蔑し、憎悪していた。

父親反面教師にして、ああならないように生きることを人生目標にしていた。

同時期から毎日同じ空想物語日常のふとしたときで流れるようになった。

の子は私と違い、とても才にも容姿にも恵まれている。

そして彼女は無関心な父親に褒めてもらうことを切望し、自分能力を発揮し続けて、ボロボロに擦り切れていく。

物語パターンが二つあって、一つは父親彼女状態気づき和解する。もう一つは、徹底的に彼女を道具として使い、「あれは娘ではなく優秀な部下」と切り捨てる。

どちらの流れの話になるかは日によって違った。

元々空想しがちで自分物語登場人物を作って楽しんでいたような人間だったが、この空想存在感はもはや空想ではなかった。

登場人物存在の質感、感情すべてがリアリティーを持って私の中にあった。

心理学的に見れば、自分の父への愛情飢餓が表出されたものだったのだとは思う。

私の状況と空想世界彼女の状況は違うけれど、「父」がどちらもファクターだった。

彼女は私の代わりに父親仕打ちに傷つき、叫び愛情を乞い、もがいてくれた。

現実の私はとてもそれができる状態ではなかった。

彼女代替として、私の感情の処理をしてくれていた。5年間。

詳しい事情割愛するが、大学生になってから父親和解した。

空想の中で彼女がし続けていたようなことを現実ででき、ため込んでいたものがなくなったのではないかと思う。

そこから、ぽっかりとその空想世界とその中の彼女を思い出せなくなってしまった。

思い出せるが、その空想五感で感じられなくなってしまった。

恐らく私の中の、彼女の役目が終わったのだ。

もう会えないのが悲しい。今の自分が思い描けるその空想物語彼女は、私の分身ではない。

当時の彼女とは違う存在で、あくまでも空想世界の一登場人物にすぎない。

自分が作り出した存在だけど、彼女は私の支えだった。しかし、自分が作った存在からこそ、今も自分のどこかにいてくれると思える。

たか空想と思われるかもしれないが、私は彼女感謝しているし、実際存在していなくても友人や親より私の近くにいてくれたのは空想世界のあの子だった。

リアルの知人たちに話せるような思い出ではないので、ここでまとめておく。

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