金曜日、菓子なんかをつまみながらぷっすまを見ていると携帯が鳴った。
こんな夜中にと少々訝しみながら画面に目をやる。「080」から始まる11桁が写し出されていた。
誰だ。名前が出ない以上、少なくとも電話帳登録はしていないことは確かだった。
普段登録されていない番号からは出ない決まりを作っていたが、深夜という時間帯が逆に作用した。
まさか昔の友人でも死んだか。まさか親が事故にでも会い警察からの連絡か。
とりとめもない妄想が頭の中で絡み合いながら通話ボタンを押した。
「あ、よかった、起きてたんだ、ごめんね」
女の声だった。
特徴のない平坦な響きをしていた。
「ちゃんと捨ててきました」
と、女は一言言った。
「は……?」
聞き返すというよりは自然と口から空気が漏れただけの返事を返した。
そして訪れる沈黙。女は受話器の向こうで黙りこくっている。
吐息一つ聞こえてこない。
「あの、すいません、どちら様でしょうか?」
やっとのことで意味の塊を投げ返すことができたが、次の瞬間通話は切れた。
彼女は誰だったのかという疑問は不思議と湧き上がってこなかった。
彼女はこんな夜中に何を捨ててきたのだろう。
何故それを俺に報告しなければいけなかったのだろう。
嫌な気持ちを抱えたまま週末を過ごした。
そしてその夜のことだった・・・