父を殺した。
大好きな父だった。ヒーローだった。
田舎で父と同じ職場の親が沢山いたから同級生に父が鬱なのが知れ渡った。
「あいつの父親、鬱なんだって。あいつもリスカしてるらしいよ」
家に帰ったら、抗うつ剤で攻撃的になった父から「お前が生まれなければ俺はこんなにならなかった」と言われた。
もう我慢の限界だった。殺そうと思った。
夜中、包丁を持った。意外と冷静だった。
寝ている父の背中を刺そうとした。
「何やってんの」
母に見つかった。
その瞬間、泣き崩れた。
そんな事が何度もあった。
「金は出さない」父にそう言われた。
泣く泣く行きたくも無い地元の大学に通った。父が行きたくても行けなかった大学にだ。娘に学歴コンプこじらせてた。気持ちわりーなと思った。
人生めちゃくちゃにされた。
父に復讐しようと思った。
「死ねばいい」なんて言わない。
「鬱、辛いよね。どうして自分だけがこんな思いしなきゃいけないんだろうね」優しい言葉をかけ続けた。
「どうしたの?つらいの?何があったの?」甲斐甲斐しく世話をした。
ずぶずぶに甘やかした。
鬱が少し良くなり始めた春先。
父にある言葉を掛けた。
2日後、父は自殺をした。
明確な殺意があった。
私は父を殺した。
「どうして」と泣きながら遺体をゆすった。
狂ったように泣きながらも母や親戚や父の会社の人の視線を気にしていた。
「早くに父親を亡くしてかわいそうに」と言われた。
私が殺したのは誰にもバレていなかった。
私が直接手を下した訳では無い。
でも、私が殺した。人殺しだ。
よく鬱病患者の家族のサポートが必要とか言われるけどそんなものクソくらえ。
逃げろ、絶対に逃げろ。
配偶者なら離婚しろ、親ならなんとしても別で暮らせ。できれば遠いところで。
愛なんかで乗り切れない。
冷たい?そんなの知るかバカ。
人生狂わされるぞ。こっちも病気になるぞ。被害者した奴らに搾取されるぞ。
なにが「ツレがうつになりまして」だ。
父を「お兄ちゃん」に変えてやり直し。