2016-01-23

増田の魂

「おい、増田。そこの自販機前で座ってる女の子。『スタポ』受給者だ」

2116年、「はてなスター保護法」(通称スタポ)が衆参両院賛成多数で可決された。

欧米諸国に遅れること5年、国家によるスター給付がついに日本でも始まった。

星がなくとも生きはいける。しかし、星がなければ穢れてしまう。

魂の穢れ。生ける屍


スタポ受給者を見たのはいつぶりだったか

不意に、急性スター中毒症になった彼女との別れを思い出した。

「ごめんね、増田くん。私、互助会から出て行けって言われちゃった。もう、スター、貰えないね

互助会けが全てじゃないだろ……」

「何にもない私には無理だよ。頭悪いし、ミーハーだし。おまけに病気も完治しない。スター乞食になるしかないのかな」

握った手が震える。この手を握り返すことに意味はあるのだろうか。

「……スタポもある」

「スタポなんて貰ったら、もうおしまいだよ」

スター乞食よりはマシだ」

「それ、本気で言ってる?」

俺を見つめる彼女の目が、俺は嫌いだった。

何でもお見通しと言わんばかりの大きな瞳が嫌いだった。

彼女は俺の手を払い、俺の正面に立った。

増田くんの、嘘つきさんさん太陽キラキラなんちゃって。星くーださいっ」

お椀にした両手を突き出して、涙を流す彼女



「……増田?」

小綺麗なだけでつまらないこの街に、スタポ受給者がいる理由

iRingを起動し、虹彩認証を終わらせる。手を眼に近づける動作が最高にダサい

俺ははてなログインし、はてなスター管理センターアクセスした。

スター譲渡ブルースターひとつお願い」

「おい、増田まさか……」

「そのまさかだよ」

この街に、星につながる種はない。

それでもこの女性がここにいるのは、きっと彼女が元住民からだろう。

「すいません」

そう言って、俺は無理やり彼女の腕をつかんでRing確認する。

ほらね、やっぱりRingは外してない。

Ringを近づけ譲渡完了

「気まぐれです。これをネタに『増田』で主語を大きくして煽り気味に書いて、星貰ってください。炎上スターですけどね」



さて、飯でも食いに行きますか。

駅に向かって歩き出す俺に、友人が後ろから声をかける。

ブルーって、何やってんのさ。もったいない

「星なんて、なくても生きていけるのよ」

「そりゃそうだけど……」

自己満よ。きったねぇ自己満。最高のオナニーよ。気分上々、はてな上場ってな」

「はぁ?」



星がなくとも生きはいける。しかし、星がなければ穢れてしまう。

穢れた魂、星で癒して抱きしめて。

星くーださいっ!!

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