2016-01-11

僕は心に童貞を飼っている。

成人式が終わり、中学同窓会に出席した。

田舎集落にある学校だったので、クラスはたった10数人、実際に集まったのも10人ほど。男子とは頻繁に会っていたので気楽に話せる仲だった。だが女子は違った。高校に進学すると同時に距離感がわからなくなり、お互い会って話すなんてことはなかった。中学までは一緒に下校してふざけあったり、外で駆けまわったりするような仲だったのに、高校に入るとクラスが変わり、周りから視線を気にするようになった。「男女関係」という見方が私達の間柄に入り込んできた。私と彼女らの会話はなくなり、例えば高校ですれ違っても出来る限り見て見ぬふりをした。

同窓会には4人の女子が出席した。皆化粧をしていて可愛かった。全員が集まって乾杯をすると、僕は司会役になった。高校から関係挽回しようとしたのかもしれない。場を盛り上げようという使命感に駆られていて、幼なじみ達にもこの場で主役になる瞬間を作り、話を聞いていた。近況を聞くと、女子は皆、普通女子大生になっていた。

酔いが回ってくるとそれぞれ過ごす中での男女関係について話した。当然女子大生ともなれば、彼氏を作ったり、かっこいい先輩と一晩の関係を持ったりする。バイト先の先輩が格好良くて好きになって遊ばれた話、彼氏がいるのに酒に酔ってその場の勢いでセックスした話。これらのしょーもない話が次々に繰り出された。

会の司会になっていた僕はこの時には自然と一論客となっていた。そして何故か嫌悪を感じていた。場を掌握する役から降格したことがその原因なのかと思ったが、どうも違うらしい。「幼なじみ」が1人の「女」になっていたことが、僕を苛つかせたらしいのだ。

幼なじみ達の中に僕が小学生時代好きだった女の子もいた。その子は僕からしたら「徒歩3分で会える幼なじみ」であったが、今はもう違う。彼女は都会で一人暮らしをする、その生活の中で僕の存在なんて微塵にも思い浮かばない。もちろん僕もそうであるが、僕の卑屈な独占欲が二十歳になった今、働きかけているのだった。そんな自己嫌悪も相まり、1人で不快になっていた。

飲み会が進み、お調子者の男子幼なじみにボディタッチをしたり、また逆があったりで、僕に内在する精神童貞心は肥大した。僕は大学複数人関係を持ったり、傍から見ればヤリチンに分類されるような人間なのだが、小中学生時代に培われた童貞としての魂は死んでいなかった。高校に入ってもそんな調子で、僕は周りの恋愛事情嫉妬していた。よく考えれば、それが高校時代幼なじみと話せなかった遠因なんだろう。

大学での生活では抑圧されていただけで、僕は心の中に童貞を飼っているのだなと考え始めると、どんどん鬱になる。僕は静かだった。

結局皆で友人の家に転がり込んで、軽く飲んで寝たので何も起こらなかったのだが、どうも印象の悪い飲み会だった。というか、皆からしたら最初だけ意気込んでいたのに周りがいちゃいちゃし始めて口数が少なくなる、非常に格好悪い人間だっただろう。

もうちょっと大人になり、精神的な童貞を払拭できてから幼なじみと話したい。

そんなこんなで成人になりました。

  • >「幼なじみ」が1人の「女」になっていたことが、僕を苛つかせたらしいのだ。 あえて使役の形で表現するところがいかにも童貞臭い、が上手い。文才を感じさせる。

  • 増田読者の増田の皆さん、読み逃した増田はありませんか? おおむね10ブクマ以下を目安に、もう少し評価されてもいいのになーという増田を集めてみました。 http://anond.hatelabo.jp/201601...

記事への反応(ブックマークコメント)

ログイン ユーザー登録
ようこそ ゲスト さん