2015-12-06

北原みのる「宮崎あおいを、待っていた!」

無職北原みのる氏の週刊夕日連載「スッポンチンポッポNOW」。北原氏は、女優宮崎あおいさんのような女性を待ち望んでいたという。

*  *  *

友人の話。出張帰りに電車に乗った時のことだ。彼の後ろに制服姿の若い女数人が立った。学校の帰りらしく、声が大きく煩い。それだけならまだしも、「あの先生、マジキモイ~」などと言って盛り上がっていた。

夕刻の電車は、圧倒的に女子空間だ。家事子育てをすることもなく、時間を気にせずにおしゃべりしたり買い物できる人たちが、ただ寝るために家に帰る電車。男は少数派だ。友人は大きなカバンを抱えながら泣きたくなったという。「サラリーマンも周りにいたんだけど、みんな下をむいていた」

……その時である! 彼の目の前に向かい合うようにして立っていた女性がいた。身長163センチ黒髪の似合う20代女性だ。その彼女が彼のネクタイを「曲がっていますよ」とひょいと直し、彼に向かってこう言ったというのだ。

お仕事、お疲れさまです。頑張ってくださいね

それは周りにもハッキリと聞こえるほど明瞭で、爽やかな声だった。そして、不思議なことが起きた。それまでさんざん下品な笑い声を立てていた女子たちが、すーっと声を潜めたのだ。

女子は、女子にどう思われるかは気になるんだなぁ」

彼はそう言うのだが、私はにわかに信じられなかった。いや、彼の言ったことがではなく、そんな女性いたことが、だ。

「ほんとなのか?あまりに辛い現実だったか蜃気楼でも見たんじゃないのか?」

私は何度も念を押した。そして確認した。

「なぁ、それ、宮崎あおいじゃなかったか?」

宮崎あおいだったのかな……」

話は変わるが……というか、これが本当は最初から言いたかったのだが、宮崎あおいさんは、凄い。

先日、研ナオコさんのステージを見たのだけれど、研ナオコさんが「こんばんは、剛力彩芽です」と出てきて、驚いた。オリコンの「理想の娘」調査では、宮崎あおいが2位に入っていた。宮崎あおいの出演した朝ドラ視聴率は25%に迫るという。

なぜこれほどに、宮崎あおい日本の男たちは熱狂しているのか。友人の話を聞きながら、ふと思った。もしかしたら、多くの男にとって宮崎あおいは、「ずっと待っていた人」だったのかもしれない。男をばかにする下品な女たちと対極にある清潔感、知性が作り上げたしなやかな振る舞い、「汚らわしさ」というものが一滴も感じられない高潔さ。

ここ数回、この社会が持つミサンドリーについて書いている。男として生きてるだけで、すり切れることが多い社会だ。そんな中、男が抱える重たい責任を思いやり、「頑張ってください」と声をかけられる女を、男たちがどれだけ待っているか。……と書きながら、私は宮崎あおいさんが、どんな人か全く知りません。ただ、宮崎あおいさんには、下品な女たちを存在で清めてくれそうな力があるのだと思う。そして「待ってたんです」と言いたくなるような、男の飢餓があるように思う。宮崎あおいさん、日本から出ていかないでほしいです……。

元ネタ北原みのり「五郎丸を、待っていた!」

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