フリースタイルダンジョン(以下FD)関係の記事が最近ホッテントリにも上がってくるようになったものの、いまいちノリきれない人が多いみたいなので、その楽しみ方について書いてみる。
無論楽しみ方は人それぞれではあるが、「楽しめたらいいと思うけど何が面白い/凄いのかわからない」とか「なんとなく面白いと思ったのでもっと詳しく知りたい」という人に役立ててもらえれば(そして日本語ラップファンが増えれば)と思ってこの文章を書く。
確かにそういう側面はあるがそれほどでもない。
俺もヤンキー系日本語ヒップホップにはちょっと引いて構えてしまうが、そういう価値観と無縁な人も少なくないので十分楽しめている。
オタクっぽいものに拒絶反応がある人でも楽しめるアニメがあるのと同じだと思う。
少なくともFDはそれほどヤンキー色が濃くないし、特に後述するモンスターの一人であるR-指定はスキルが分かりやすく飛び抜けている上数年前まで童貞だったので文化系リスナーの入門におすすめである。
自分に与えられた小節内(FDでは8小節×2だが他の大会では8小節×3が多い。テレビ向けの変更か)で、より審査員や客を盛り上げられたほうが勝つ。
多くの場合、
・リズムに上手く乗り(時にあえて外し)
・即興で上手いことを言った(韻を踏む、上手い比喩を出す、相手に刺さることを言うなど)
方が勝つ。
#9の般若の勝利は上の2つに加え「フリースタイラーとしては7年活動せず生きた化石レベルに思われていたのにめちゃくちゃ熱いラップを見せた」という点での盛り上がりがプラスされているので、知らない人にはわかりにくかったかも知れない。
現時点で単純に即興で上手いことを言うのが上手いのは、般若よりはむしろモンスターのR-指定だ。
https://youtu.be/j2nxKXbrqSI?t=8m40s
これを見てもらえれば尋常ではない頭の回転の速さが分かると思う。
#6のCHICO CALITO vs R-指定戦を教材として取り上げる。
冒頭でも言ったが楽しみ方は人それぞれなので、こういう感じの楽しみ方もあるよ、という一例として読んでほしい。
https://youtu.be/nDs40FCvgNk?t=16m56s
決める最強のロン毛とロン毛 それ出来ないなら本でも読んで
まず相手に合わせかつ自分しか言えない韻を7文字も踏むのが上手い。
もしかしたら即興ではなく試合前からR-指定に合わせて仕込んでいた、専門用語で言うところの「ネタ」かもしれないけど上手いこと言ってるのでOK
4連覇に高まってるぜ でもそのロン毛は絡まってるぜ
CHICOの状況(R-指定に勝てれば4連覇)とCHICOの言ったこと(ロン毛・正解不正解)を取り入れた韻を踏みながらdisっている。上手い。
こいつを倒せば前人未到 よく頑張った感動した
「前人未到」はそれまでのモンスターが全員負けた状況に加えて、試合前に司会のUZIが「前人未到の4thバトル!」と煽ったのも受けているかもしれない。
前人未到と前自民党総裁はダジャレ/ギャグっぽい。この手の韻や芸能ネタは好き嫌いが分かれるところではあるけど、R-指定はとにかくスキルが高いのでOK。
ここでも「自民党をぶっ壊す」とかけてdisり、「懲りずにトップに」で韻を踏みつつセルフボースティング(俺はスゲェんだぜという誇示)に繋げている。すごい。
これが前人未到 知らないけど歩くのはチャンピオンロード
どうの俺が言ってること お前が小泉またも懲りずに
単にR-指定の繰り返しになってしまっているし、言葉が上手く出ずに「知らないけど」「どうの」と内容のない言葉で時間を浪費してしまっている。厳しい。この後では露骨に言葉を詰まらせてしまう。
気付けば後ろにチャンピオンロード
CHICOが詰まったのを見過ごさずに、即興で立ち往生→末期症状→チャンピオンロードと踏んで見せる。
「末期症状」は司会のZEEBRAが参加した曲名を踏まえているし(Maki&Taiki Feat. Mummy-D&Zeebra/末期症状「マイク握らずに居られぬ衝動、末期症状」)、
「気付けば後ろにチャンピオンロード」は、単にCHICOの繰り返しでなく実際にR-指定がUMBを3連覇したことを踏まえている。これを即興で出せるのはどうかしている。
ヒビが入るより日々ライムするぜ 今見せるぜこのkick it
まるでお前俺が出てきたことが危機
またもギャグっぽいライン。しかしチャンピオンロード→ロードトラブル→虎舞竜→高橋御船→離婚協議→ヒビが入る→日々ライム、をスムーズに繋げるのが凄い。
そもそもまず上がってきてないと思うんですが