タバコに火をつけた。
俺の親父は堅物の公務員で、「タバコ一本につき10秒の寿命を犠牲にしている。」というような嫌煙家だったが、二十歳のときからはじめたタバコはやめられずに居る。
不意に自分の足が震えていることに気がつき驚く。
この震えは11月の寒さからなのか、
それとも、私の変わらない生活が一年が経ってしまったことの恐れなのか、それは分からない。
苦労はしたし、成功もしていないが、好きなことをして生きてきた。
両親もまだ元気にしているし、人から言わせれば友達も多い方らしい。
世の中、生きたくても生きれない人も居るし、タバコを吸いたくても吸えない人もいるだろう。
そんな人たちに比べれば、私は五体満足で、些細な話をできる友人が居て、両親も元気で...
人と比べれば幸せなのだろうな、きっとマシな人生と呼べるはずだ。
じゃあ、お前は何が幸せなのかと聞かれてもそれに答えることができない。
目の前の幸せも噛み締めることもできず、
ただ「このままでは」と思い行動するが、結局抜けられない
無い物ねだり。
そうだ、俺には俺にない物がほしい。
それは俺の物になった瞬間輝きを失う。
色を失うと思っていても求める。
しかし、求めていても辛いだけだ。
きっと俺は正気を失ってる。
足元を見ればたくさん転がっている物を、空を見て探しているのだ。