■民H24
設問1(1)
1. Fの主張は、以下の
理由で認められない。
2. 甲
土地は元々Cが所有していた。Cの死亡によりDEはそれぞれ2分の1の共有持分権を取得した(900条4号)。したがってDの死亡によりBが
相続したのは、2分の1の共有持分権に過ぎない。そのため
BA間の
売買契約によりAが取得したのもこの2分の1の共有持分権
である。
最後に、Aが死亡したことでFが
相続したのもこの2分の1の共有持分権に過ぎない。
したがって、Fが甲
土地について有する
権利は2分の1の共有持分権に過ぎない。そのため、Eに対して、甲
土地の
所有権が
自己にあることを主張することはできない。
設問1(2)
1. Fが有している共有持分権(以下、持分権αと呼ぶ)について
持分権αについて
時効取得を主張する
場合、これはFに
帰属する
権利である(上述)以上、162条1項の「
他人の物」という
要件を充た
さないのではないかという点が
問題となる。
162条1項の
趣旨は、永続した
事実状態の
尊重や
証拠の
散逸の救済にある。この
趣旨は
自己物についても当てはまること
から、「
他人の物」
であることは同
条項の
要件とならない。
したがって、下線部の
事実は
法律上の意義を有
さない。
2. Eが有している持分権(以下、持分権βと呼ぶ)について
※ここよく分かりません。
設問2
1. 本件でGH間には
寄託契約が締結されており(「保管することを約して」(657条))、
和風だしが丙
建物に引き渡されている(「物を受け取る」(同条))。そのためGH間には
寄託契約が成立している(657条)。
その
効果としてGは、
和風だし1000箱の
返還をHに請求することができる(662条、
契約書(以下「契」と略す)6条)。
2. これに対しHはまず、
和風だし2000はこの半分が
存在しない以上、この
返還請求は
履行不能であると
反論している。
しかし、丙
建物には
和風だし1000箱が残存している以上、
社会通念上履行が不能と言うことはできず、この
反論は認められない。
3. 次にHは、Gの
返還請求を認めるとFの
権利を
侵害する
から、
返還はできないと
反論している。
(1) Fの
権利とは何か
この
反論を
検討すると、そこに言うFの
権利とは何かがまず
問題となる。
本件ではFH間でも【別紙】の内容の
寄託契約が締結されている。
その上でHは、G(「他の者」(契3条1項)との
寄託契約に基づいて、Fの
和風だし(「本
寄託物」(同条))と種類及び
品質が同一なGの
和風だしを保管している。そのためHは、契3条1項の
効果として混合保管が許され、現にそうしている。
その結果今度は契4条の
要件(「混合保管をされた物」)を充たし、その
効果としてFは
和風だし2000箱について2分の1の共有持分権を有するの
である。
これがHが
問題とするFの
権利である。
(2) Fの
権利が
侵害されるとはどういうことか。
Gの
返還請求を認めると、丙
建物に残存する
和風だし1000箱が全てGの手許に行くこととなる。この
結論はFが有する共有持分権の実現を妨げること
から、Fの同
権利を
侵害することとなる。
そして、Fの
権利を
侵害してまでGの
返還請求を認めることは
妥当でない。契3条1項によれば、本件
寄託契約の
当事者は混合保管を承諾したことになっている。これは、単に混合保管それ
自体を承諾するにとど
まらず、混合保管に伴い生じる
トラブルにつき、混合保管の
当事者間で
合理的な利害調整をすることも承諾したことを
意味する。それにもかかわらず、Fの
犠牲の下Gの
返還請求を認めるのは、契3条1項に反し、
GF間の公平にも反するの
である。
(3)
GF間の
合理的な利害調整
それでは
GF間の利害を
合理的に調整するにはどうすればよいか。
これを
検討すると、契6条の「同一数量
のもの」という
文言を
制限解釈し、「(各
寄託者の共有持分権の限度で)同一数量
のもの」と解すればよい。こうすれば、契3条1項、4条、6条を
矛盾なく解することができる上、このような利害調整はGが契3条1項でした「承諾」の
範囲内
であると解される。
(4) 上記
解釈を前提としてGに認められる
権利 上記
解釈を前提とすると、Gは
和風だし1000箱を
寄託している
ものの、Gは残存する
和風だし1000箱に対して2分の1の持分権
しか有していない。そのため、Gは500箱を限度(残存する1000箱×2分の1)に
返還請求が認められる。
設問3
1. 本件でFH間には
山菜おこわを保管する
合意がなされており(「保管することを約して」(657条))、
山菜おこわ500箱が丙
建物に運び込
まれている(「物を受け取る」(同条))。そのためFH間には
寄託契約が成立している(657条)。
その
効果としてHはFに対し、
寄託物についての注意
義務を負う。ただし
山菜おこわは
無償で保管することとなっている(「無
報酬で
寄託を受けた」(65
9条))
から、注意
義務の程度は「
自己の
財産に対するのと同一の注意」(同条)
である。
2. Fは上記注意
義務違反を
理由にHに
損害賠償を求めているが、本件でこの注意
義務違反は認められるか。
本件で
山菜おこわ500箱が盗取されたのはHが丙
建物の施錠を忘れ
たから
である。
財産を保管する
建物に施錠をするのは、それが
自己の
財産であってもそうするのが通常
である。したがって、Hの上記
行為は注意
義務に反すると言える。
3. したがって、Hは
自身の注意
義務違反で(「
債務者の責めに帰すべき事由によって」(415条但書))、
山菜おこわの
返還が不能となっており(「履行をすることができなくなった」(同条))、415条の
要件を充たす。
4.
問題は賠償すべき損害の
範囲であり、これは416条の
規律により決する。すなわち、①当該損害が
特別損害に当たる
場合には、②
債務者が予見可能な
場合に限り賠償の
範囲に含
まれることになる(416条2項)。
(1) ①について
Q
百貨店の全
店舗で
山菜おこわを取り扱ってもらえなくなったとの損害は、評判次第で
山菜おこわを取り扱ってもよいとのQ
百貨店の申出が前提
事情としてある。このような
事情は通常ある
ものではなく、「
特別の
事情」(416条2項)に当たる。そのため上記損害は
特別損害に当たる。
(2) ②について
確かにFは、Hに対してQ
百貨店の申出があったことを伝えて
いるから、
予見可能性はあったと言い得る。
しかし、実際にQ
百貨店が
山菜おこわを全
店舗で取り扱うかどうかは、
山菜おこわの評判が良い
ものであるとの不確定要素に係っている。
そこで、416条2項で求められる予見程度が
問題となる。同項の
趣旨は損害の公平な分担にある。そして、Fの主張する上記損害は巨額な
ものとなることが予想される上、元々FH間の
寄託契約が
無償であることを考え合わせると、その予見の程度は厳格な
ものが求められる。具体的には、
山菜おこわがQ
百貨店で取り扱われるのがほぼ確実だとの予見が
必要である。
本件でHがFの話
から予見できたのはせいぜい、
山菜おこわをQ
百貨店の全
店舗で取り扱ってもらえる可能性があることぐら
いである。
したがって、本件で416条2項の「予見することができた」との
要件は充た
さない。よって上記損害は賠償の
範囲に含
まれない。
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