2015-09-20

にんげんだもの」とヒューマニズム

欧米古典を読んでいると、ギリシャローマ時代偉人格言引用に頻繁に出会う。

先日読んでいた本で引用されていたのが、

"et nihil humanum"

という言葉で、紀元前2世紀ローマのテレンティウスが書いた喜劇の冒頭の一節だそうだ。

「エット・ニヒル・フムマム……人間的なことはどんなことでも自分とは無縁ではない」

という意味だという。


まり、酒を呑むことも恋をすることも、他人を羨ましく思うことも誰かを助けてやりたいと思うことも、

すべてひっくるめて人間行為であり、それは自分とは無縁のことだとは思ってはならないという、

人間性への信頼感、諦観意味している。

この言葉は、ヒューマニズム人間主義モットーとして欧米でよく知られているという。


それを知って思い出したのが、相田みつをのあの詩である


「つまづいたって

 いいじゃ

 ないか

 にんげんだ

 もの


相田みつをのこの言葉も、近年よく日本人引用するようになった。

日本人にはギリシャローマ古典は身近ではない。

そこに、一時期もてはやされた相田みつをのこの詩が日本流ヒューマニズムモットーとして

利用されるようになった機縁がある。

西洋から移植されたヒューマニズム日本人の中に根付き、そこに相田みつを言葉がピッタリとはまるようになったのだろう。


欧米人をうらやましいと思うのは、そんなときだ。

彼等の根っこには、ギリシャローマという、合理主義的で民主主義的な、今の時代を覆う思想の花開いた文明がある。


から、今の時代に二千年前の格言がそのまま使える。

彼等の文明は、古代文明の延長上にある。

から深みがあり、強い。


それに対して、日本人、いや、韓国人中国人ベトナム人も、王による独裁的な支配を当然とする思想

二千年間信奉してきたために、近代までの思想に、現代思想に利用できるものが少ない。

よって深みがなく皮相的だ。


相田みつをの詩がたびたび引用される日本の現状には、ヒューマニズム歴史に欠けた東洋文明貧困が現れている。

  • 自分の都合のいい時だけヒューマニズム、都合が悪い時は自他の区別がついていない 享楽主義の日本人らしい発想だよな http://anond.hatelabo.jp/20150920000503

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