2015-07-12

オリエンタリズム

ボストン美術館の展示に対する批判が、物議を醸している。

http://www.huffingtonpost.jp/2015/07/11/museums-kimono-wednesdays-cancelled-after-claims-of-racism_n_7774766.html

これに対する対応が、その人自身の知識、政治的立場現実理解対応方法の様々なレベル対応する構図となっていて、とても興味深い。

もともとのモネの絵に、ジャポニスム諷刺する意図があったかどうか=定かではない…(1)

裾を引きずりドレスのように着こなす仕方は、まさに「ジャポニスム」であり、「日本文化への理解」に基づいてはいない=事実…(2)

公開当時、議論があった=事実…(3)

これを踏まえて、

今回の件の問題提起を行った人は、背後に反日的意図をもっているかどうか=分からない…(4)

サイードによるオリエンタリズム批判に淵源するような趣旨批判があった=事実…(5)

抗議を受けて、美術館イベントの中止を決めた=事実…(6)

という反応があり、リンク先のコメント欄では、

批判は正当であり、中止はやむを得ない派』Iwa Taka氏、関裕子氏ほか

『今回の抗議は反日的意図によるものであり、不当である派』守谷知氏、望月鎌足氏ほか

を左右両極として、相互に噛み合わない意見表出が行われており興味深い。

個人的には、

前者に対しては、批判者の論理への理解力は高いことはよいとして、批判自体への批判が欠けている点は問題だと思う。たとえば、余りにこの意見を厳格に適用すれば、異文化を紹介するあらゆる試みは事実上不可能となること、そして、オリジナルを過剰に尊重する態度こそがかえって現実に生きている人間文化を貶める働きもする、という知見こそがポストコロニアリズム重要な成果の一つであったこと(つまり「『ジャポニスム自体もまた一つの文化である」といった見方)に、もう少し思いを馳せるべきだと思う。

後者に対しては……まあ、いつものようにいつものごとく、なわけで、もう少し勉強してください、というか、何で批判されているのかからないならせめて黙っててくださいという。いたずらに議論感情論とか陰謀論に落とし込んで混乱させるし、かつ、分かった上で反論してる人までがバカみたいに見えて困るので。

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