息子:8カ月、かわい過ぎる
初めての子どもが産まれて、嫁はしばらく母乳で頑張ろうとしていた。でも駄目だった。ここの経緯は省く。緊急帝王切開だったこと、2週間くらい息子がNICUに入院していたことが関係しているのかもしれない。よくわからない。
嫁はひどく落ち込んだ。本人は認めないだろうが、一時はノイローゼ気味だったと思う。いや、離乳食が進んできた今でもそうだ。他人にミルクの話をすることにすごく抵抗があるし、息子に対して罪悪感を抱いていると思う。
空気の読めない親戚のおっさんに法事の場で「あれ、母乳じゃないの? うちの娘は母乳でね……」と言われるくらいは想定内だけど、ブックファースト(自治体が生後半年くらいで最初の一冊の絵本を、とプレゼントしてくれる事業)で、市の保健師から「あなたは母乳をあげられていないのだから、せめて絵本を読んで愛情を与えなさい」って言われるこんな世の中じゃ、まあミルク派は胸を張って生きてはいけない。
嫁も自分も下手に仕事の関係で母乳のメリットを知り尽くしているというのもある。そう、たしかに母乳は素晴らしいものだ。愛着形成にも重要だし、新生児から乳児早期の免疫にも関わっている。今、母乳にしようかミルクにしようか、選べる立場の母親がいれば、迷わず母乳を進める。しかし、ミルクしか選択肢がなくなった時に、逃げ道なく追いつめられる今の社会は生き辛すぎる。
これが最強にして最大。もちろん母子関係は大切だけど、24時間付きっきりは精神的にきついこともある。そんな時、父親でも預かれるのは、母はリラックスタイム、父は子育てへの自身が得られて良いこともある。とにかくそうなったら違う部屋に移動でもいいから母を子から離すのがポイントだと思う。
母乳は赤ちゃんが飲みたいだけ出るものだからいくらあげてもよい、でもミルクは飲ませすぎると体に悪いからちゃんと3時間あけなさい、と指導された。これは最初は凹んだ。2時間経ってギャン泣きしていても抱っこしかしてあげられないのだ。でもそのうち開き直って、どうせ3時間後まであげられないならと、積極的に外出することにした。よくミルクだと荷物が多くて、と言われるけど、例えば15時に飲ませたら18時までに帰ってこれる範囲であればオムツとおしり拭きさえ持てば外食でも何でも出かけられる。そのうち、外出自体に自信がついて、精神衛生上も良かったと思う。
「喫煙所での喫煙者同士の結びつき」って喩えしたら、八方から矢が飛んできそうだけど、そういう面はある。育児サークルでも嫁が友達になるのはミルク派が圧倒的に多いと思う。特に「あたし母乳めんどくさいからミルクでー」とかあっけらかんと宣言するギャルっぽいママとかだと、話がしやすいと言っていた。母乳だと公言できない人たちのコミュニティはその分深まるのかもしれない。母乳派のことは知らないけど。
繰り返すけど、母乳の方がミルクよりいいのは充分わかっている。でもミルク派の人が子育てして良かったな、って思える情報ももっとあっていいんじゃないか。