2015-07-02

銀行中の人だけど、苦々しい会計簿アプリのことを書くよ

ホッテントリにがってるので、ちょっと書いてみるよ。

http://twinavi.jp/topics/it/5593e714-5b0c-4b21-99f5-3f94ac133a21

銀行人間としても、この手のアプリは苦々しく思っている。

やめてほしいなあ、と思う理由は次の3点。

不正払戻への対応めんどい

事故犯罪によって預金不正に払戻されたとする。あまり知られていないのだけれど、このとき預金者に明らかな過失がなかった場合には、損失額は銀行補填する(預金保障規程という。ペイオフとは別物)。

明らかな過失というのは「普通やらんだろ」っていう内容のもので、例えば

で、会計簿アプリのケースも、自己責任パスワード預けていたとすれば「預金者の明らかな過失」にほぼ該当すると思われるので、銀行側が損失補てんをする必要はない。その点の心配はない。

ただし預金から補てん請求があったときに、「預金者に明らかな過失があった」ことを証明する義務銀行側にある。大規模なデータ漏れなどの際に不正払戻しの被害が生じたら、当行預金者の被害者存在確認と損失額の把握、預金者が「アプリ側にパスワード預けてた」ことの立証を書類にしていく必要があるのだけれど、正直、そんな面倒な仕事をさせないでくれ、と思う。そういうときに限って「銀行アプリデータ提供していたからいけないんだ」とか言い出すクレーマー絶対現れるし。

ここまで書いて気がついたけど、そもそも乱数表=取引パスワードログインパスワードでしょ?データ閲覧のためだけなら乱数表データ不要なはずなのに、なんでそれ収集するのさ?

フィッシング詐欺材料を作らないでくれ

これだけフィッシングサイトに気をつけろって言っていても被害者は減らない。

アプリの画面に似せたフィッシングサイトが横行すれば(時間問題だと思う)被害者は増加するだろう。上記とも関係するが、犯罪者に余計な知恵を付けさせないでくれ。

銀行重要商売リソースを使わないでほしい

これは、銀行の外の人から見ればどうでもいい話なんだけど。

預金クレジットカードの決済履歴は、その人の消費性向を如実に表す貴重なデータだ。

が透けて見える。銀行ではずいぶん前から、こういった過去データ分析してその人の消費性向にあった金融商品を高い精度で提案したい、という研究を進めている。銀行とすれば将来の商売需要ネタが、他者に把握されるというのは極めて都合が悪い。やめてほしい。

~~~

もちろん預金者本人のデータ預金者がどう使おうと自由なわけだけれど、

普段から個人情報は格段にセンシティブな取扱をしている手前、

こういう形でデータが外部に流れていくのは、所在なさというか心地悪さというか、気持ちの悪さを感じる。

そもそも、自分の中でも最もプライベート情報をよく他所様のフォームにホイホイ入力ちゃうよなぁ、ってのが個人的感想で。

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