2015-06-01

DVをしてきた父親をずっと憎んできた。

DVをしてきた父親をずっと憎んできた。

DVのものというよりも、家庭内で突然キレる、レジャー最中にほぼ必ずキレるという習慣が、おれから家庭=安心という概念を失わせ、部屋にこもってゲーム物語勉強を続け、極力家庭に興味を持たず、逃避する人間になるしかなかった。部屋の鍵もかけられなかったから、教室予備校図書館に逃避せざるをえず、一人暮らしをしたいがためだけに名門大学合格した。両親は無邪気によろこんでいた。おれはそれとなく両親のせいで自分がいかに惨めな時代を送ってきたかを知らせてきたが、自分たちがあれだけキレて子どもから安心を奪っていたことについては、完全に無自覚であった。自分たち日常的にキレていたということすら、思い出せないようであった。暴力についても、普通に許容範囲だったと感じているようだった。相手が女子どもであるという斟酌は無いようだった。貧しいながら食事と住居を提供してきたじゃないか、おまえは何も言わなかったじゃないか。いわなかったのではなく、言えなかったのだ。子どもだったから、上手に表現できる言葉を知らなかったのだ。それに、仮に知っていても、結局のところ、両親の、子ども気持ちへの無頓着をどうにかすることはできなかっただろう。当時俺が一番嫌いな言葉が、親の心子知らずだった。

 

大人になり、専門職に就き、コミュ障をなおし、一定収入を確保できるようになって心のゆとりを得られ、「親のことは許した方が良いのだ」という風潮に対して、はじめこそ苛々していたが、やがてそうかもしれないなという気持ちを持てるようにもなってきた。しかしそれでも、許せたのは父に殴られながら父への情を切れなかった弱者としての母だけで、父親のことを理解する気にまではならなかった。結局のところ、おれは彼らを敬遠しただけだった。それで十二分だと思っていた。

 

仕事の都合で、いわゆる弱い男性を相手にする機会が増えた。彼らからはおれは、華々しいキャリアゆとりある暮らしを謳歌していると見えるようだが、それで安心しきれるほど盤石な基盤を築いているとは言えないことをよく知っている。みんな必死なんだ。おれも、みんなも。どうにかこうにか形になっているように見えるだけだ。彼らの役に立つのはおれの仕事だし、少しずつそれ以上のものになっている。彼らの中にも、俺と同じ弱さを見る。必死さを見る。

 

父は弱者だったのだ。頭では、貧困暴力連鎖についてはよく知っているつもりだった。父が貧しい弱者であったことも、頭では知っているつもりだった。そういう理解とは別の何かが、突然、臓腑にすとんと落ちた。父も被害者だったのだ。弱者であり、気弱な母が、どれほど父のチャレンジ精神を奪っていたのかに、ふと理解が届いた。母は、息を吸うように他人萎えさせる人だった。ネガティブな言動が習い性になっており、何事にも挑戦せず、他人の挑戦心をやわらかく腐らせて折り、そのすべてに「あなたのことを思って言ってるの」という枕詞をつける人だった。それが父もつらかったんだろうなとは、前々から頭では理解していた。ただ、許したくないという気持ちがおれの何かをずっと遮っていたのだ。

 

父のことを許したいと思ってきた。でもずっと出来なかった。それが今、おれの小さな新しい家族を守るためにもう一段厳しい努力を積み増そうと決めた瞬間に、自然な思いとしておれのなかで結実した。父も闘ったのだ。おれと同じように。いや、俺が今、父と同じように闘っているのだ。父から家族への愛は、お世辞にも、充実していたとはやはり言えない。現実になしたことは、正直に言って、誉められるほどのものではなかった。利己心や虚栄心からくるものがあまりにも多かった。それでおれは絶え間なく傷ついてきた。けれども。今のおれはそんなことはどうだっていいのだ。どうでもいいんだ。父は闘っていたんだ。それで十二分だ。

 

父が病で死んで数年経つ。墓は遠方にあり、現状、業務状況を考えると足を伸ばすのは現実的ではないし、それは父のためでなく俺や母のための何かだ。おれが父に出来ることは、父がこの世にいない以上、本当に何もない。それに、みんな必死なんだ。おれだけじゃない。おれはいま、俺が求められることを、もっと真摯になすしかない。おれは、父や母が「できなかったこと」を呪ったし、おれじしんが子どものころに「できなかったこと」を呪ったし、今自分が「できていないこと」に忸怩たる思いがある。でも結局のところ、その構造はさけられず、受け入れるしかない。おれはただ真摯に生きるしかない。

  • http://anond.hatelabo.jp/20150601103435

    読んだ。共感する所多数。

  • http://anond.hatelabo.jp/20150601103435

    この手の話って大抵「全ての元凶は母、父は悪くない」になるよなあ。 母がそういう性格になったのは父のせいだろう、にはならないらしい。 日本のミソジニーは、男がやる悪事は全て...

    • http://anond.hatelabo.jp/20150601120351

      俺もそこ気になったな。でも母親も因果関係の中にはあるんだろうなと思う。 とは言ってもアル中になったり家族に手あげたりというのは 父親の責任であって、母親の責任とは思わない...

    • http://anond.hatelabo.jp/20150601120351

      それは「フェミニズムが世の中のあらゆる問題の責任を家父長制に還元しようとする」のと鏡映しでは。 →父親→(暴力)→母親→(母親としての支配)→息子→・・・という負のスパ...

      • http://anond.hatelabo.jp/20150601142838

        今大流行りの「弱者男性が生まれたのはありとあらゆる意味で女性のせいだ」とか 「男が性犯罪に走るのは女が誘惑したからだ」とか そういうのは家父長制と関係あるんでしょうか。 ...

        • http://anond.hatelabo.jp/20150601172603

          そうなんだよな。 もっと男は女の存在や意見を無視するべき。

        • http://anond.hatelabo.jp/20150601172603

          息子をマザコンにしてしまうのは結局母親だからなー。もちろん父親の育児不参加が根底にあるのは否定しないよ。

          • http://anond.hatelabo.jp/20150601174311

            「有り得ない完璧なる聖母を求める幻想」を満たせない母親のせいで俺はマザコンになった!と言われても。 んでこの「有り得ない完璧なる聖母を求める幻想」ってのは、母親が作った...

            • http://anond.hatelabo.jp/20150601175437

              「有り得ない完璧なる聖母を求める幻想」を満たせない母親のせいで俺はマザコンになった!と言われても。 逆だよ逆。マザコンが生まれるのは母親が息子に対して過保護になるから...

              • http://anond.hatelabo.jp/20150601182103

                せめてツリー読んでから書けよ。 それとも読んだ上でそれなのか。だったら読解力無さ過ぎだ。 「有り得ない完璧なる聖母」なんてこの世に一人たりとも存在しねーよ。だから「有り...

                • http://anond.hatelabo.jp/20150601193259

                  「自分の母親が上記のような女神ではないこと」に憎しみを抱き、その母への憎しみを全ての女に適応するのがミソジニーの一種だが だからこの認識が逆だって言ってるの。2chやまと...

                  • http://anond.hatelabo.jp/20150601193651

                    だから、それもミソジニーだっつーの。最後まで読め。

                    • http://anond.hatelabo.jp/20150601193751

                      「母親を聖母と思い込み、他の女性に対して母親のように振る舞ってくれない憎しみをぶつける」ことがミソジニーだというのはその通りで、別にそれは批判してないよ。 そもそもあな...

        • http://anond.hatelabo.jp/20150601172603

          どこで流行ってんだそれ

        • http://anond.hatelabo.jp/20150601172603

          エディプスコンプレックス拗らせたような顔しちゃって

  • http://anond.hatelabo.jp/20150601103435

    DVしそうで怖えー

  • http://anond.hatelabo.jp/20150601103435

    理不尽かそうでないかの判断は付くだろうが 叱るべき時に叱れない様にならないようにな 場合によってはビンタも必要だ

  • http://anond.hatelabo.jp/20150601103435

    人の死には浄化作用があるよね 距離を置くこと、時間が過ぎることも、色々な物事を沈静させる効果があると思うけれど 死は浄化させる 増田はお父さんが死んで初めて許せたんじゃな...

  • http://anond.hatelabo.jp/20150601103435

    単純に「男性弱者」を言いたいがために冗長な文章をお疲れー

  • http://anond.hatelabo.jp/20150601103435

    うちの親父もレジャーの際は必ずと言っていいほどキレてたなあ。 お陰で遊園地が大っ嫌いになってしまったままだ。

  • http://anond.hatelabo.jp/20150601103435

    >ネガティブな言動が習い性になっており、何事にも挑戦せず、他人の挑戦心をやわらかく腐らせて折り、そのすべてに「あなたのことを思って言ってるの」という枕詞をつける人だっ...

  • 解毒

    傷痕が残るほどの暴力を小学生の息子に加える父、その父が死んだ後は、学生の息子を経済的に搾取する母…… というのが私の夫の両親。 私は正直彼らに怒りしか覚えないし、死のうが...

  • http://anond.hatelabo.jp/20150601103435

    仲間がいた

  • http://anond.hatelabo.jp/20150601103435

    良い父親とは、死んだ父親のことだ

記事への反応(ブックマークコメント)

アーカイブ ヘルプ
ログイン ユーザー登録
ようこそ ゲスト さん