小学生の頃、自転車がパンクすると親から500円もらい、嬉々として近くの自転車屋さんまで自転車を押していったものだ。
私は、自転車屋さんがパンクを修理するのを眺めるのが大好きだった。
油まみれのツナギを着たおじさんは、私の自転車をスタンドに立て掛け、パンクした方のタイヤのバルブのネジや虫ゴムを取り外す。
空気の抜けたタイヤとリムの間にヘラのようなものを差し込み、リムからタイヤを難なく外していくおじさん。
そして外したタイヤの内側からチューブを引っ張り出すと、虫ゴムとバルブのネジを戻し、空気を入れる。
ソーセージのようにふくれたチューブを水の入った細長い桶の中に押し込む。
水面が静まるとチューブを引き上げ、ずらして、また水の中に突っ込む。
一周するまで繰り返したらチューブをタオルで拭き、見つけた穴付近をヤスリで擦り始める。つやつやしたチューブの表面が真っ黒に変わっていく。
そして小さな缶に入った接着剤のようなものをチューブに塗り、平らに延ばす。
この缶は使い込まれた木製の踏み台のようなものに埋め込まれていて、縁は接着剤でテカテカになっていた。毎回それが何故か凄く気になった。
ゴムのシートを取りだし、ヤスリで黒くなったところと同じくらいの大きさに四角く切り取る。更に四隅を丁寧に丸く切る。
そしてクライマックス。
ゴムシートを慎重にチューブに張り付けると、さっきの木製の踏み台のようなものの上にチューブを置き、美容ローラーのようなものでコロコロと圧着する。
音もなくチューブの上を往復する金属製のローラーが付いたその道具が、私は欲しくて堪らなかった。じっと見つめていただけだったけど。
それから先は、また空気を入れたチューブを水桶に入れて問題ないか確認し、チューブをタイヤの中に戻し、タイヤの上から揉みながらチューブの位置を調整し、タイヤをリムに嵌め込み、空気を入れておしまい。
500円をおじさんに渡し、自転車に乗って走り出すと、あっという間に家に着いた。
あ~ こりゃ、タイヤごと変えないともうダメだねぇ と言われて、 2500円請求されたシーンは マダー?